相場のデータ・指標

「日経平均株価」のデータ分析(2020.12)(PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、ドル建て日経平均株価、NT倍率、信用評価損益率、騰落レシオ)

ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、ドル建て日経平均、NT倍率、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

1.PER・PBR

まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。

この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。

日経平均株価とPER13~17倍相当株価の推移を示した図(2020.12)

この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されています。

そのため、こういった状況下では、平均PERが指標としての意味を為さなくなってしまっていると言わざるを得ません。

次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。

PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

日経平均株価とPBR1~1.5倍相当株価の推移を示した図(2020.12)

平均PBRの方は、3月16日に0.82を付けたあと、直近では1.2倍での推移となっています。

なお、12月18日大引けの時点で、平均PBR 1.1倍相当が24533円、平均PBR1.3倍相当が28994円となっています。

2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ

次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。

海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。

海外投資家の売買動向と日経平均株価の推移を示した図(2020.12)

この図から、足元で、海外投資家が売り越しから買い越し傾向へと転じていることが見て取れます。

また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。

ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ていきます。

この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。

日銀ETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示した図(2020.12)

さらに、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

日銀ETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額との合計と日経平均株価の推移を示した図(2020.12)

この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。

3.ドル建て日経平均株価

なお、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価は、次のような推移となっています。

ドル建て日経平均株価の直近の推移を示した図(2020.12)

ドル建て日経平均は、何年にもわたり上値抵抗線となっていた200ドル超の水準をブレイクし、12月18日時点で約259と、バブル時の最高値である約273に迫る勢いとなっているのです。

4.NT倍率

また、NT倍率も見てみることにします。

NT倍率と日経平均株価の推移を示した図(2020.12)

この図からは、NT倍率が日経平均株価の上昇と同程度に上昇しており、今回の株価上昇が日経平均株価主導、おそらくは海外投資家の日経先物買いによるものだと推察されます。

5.信用評価損益率

続いて、信用評価損益率を見ていきます。

以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。

信用評価損益率と日経平均株価の推移を示した図(2020.12)

一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。

信用評価損益率は、リーマン・ショック以来となる-30%超にまで低下していましたが、直近では-13%超にまで戻しています。

ただ、株価の上昇と比べて、信用評価損益率の戻りが鈍いのは、空売りによる損失が膨らんでいる投資家もいるためだと推測されます。

6.騰落レシオ

最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。

騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。

騰落レシオと日経平均株価の推移を示した図(2020.12)

騰落レシオに関しても、株価の上昇と比較して、そこまで上昇していないことが分かります。

やはり、今回の株価上昇は、日経平均株価に含まれるような一部の大型株が先導したものであると言えそうです。

7.総括

ここまで見てきたように、今回の株価上昇は、外国人投資家による大型株の買いによってもたらされたものだと言えます。

ちなみに、今年の初め頃から、欧米企業に比べて現預金の手厚い日本企業の方に投資妙味があるのではないかと言い続けてきました。

今回、外国人投資家がに日本株を買ってきた背景の1つにはそういったことがあると思われ、それは今後も変わらないと思われます。

なぜなら、新型コロナウイルスの感染拡大は未だとどまるところを知らないような状況だからです。

そして、今回の株価上昇で、大型株の中にはバリュエーションがかなり高くなってしまったものも散見されます。

そういったことから、今後の外国人投資家による買いには、大型株から業績の良い中小型へと銘柄選別が行われるのではないかと考えられます。

さて、今年も残りわずかですが、毎年年初には日経平均株価の先行きを占う記事を書いていますので、是非そちらもご覧いただければと思います。

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