投資戦略・手法・市場展望

「インカムゲイン」か「キャピタルゲイン」か

1.NISA口座における国内株式の保有残高ランキング

前回は、株主優待や配当について書きましたが、今回も配当についてもう少し補足していくことにします。

というのも、個人投資家には、株主優待銘柄と同様に、高配当銘柄を志向する傾向があるように思えるためです。

その参考になるものとして、SBI証券が毎週発表している、NISA口座における個人投資家の国内株式の保有残高ランキングがあります。

その直近の10/19~10/23までの取引を基にしたランキングが、以下になります。

  1. 日本たばこ産業(JT)
  2. みずほフィナンシャルグループ
  3. オリックス
  4. ソフトバンク
  5. すかいらーくホールディングス
  6. イオン
  7. 三菱UFJフィナンシャル・グループ
  8. 武田薬品工業
  9. キヤノン
  10. 日産自動車

これを見ると、株主優待が魅力的であったり、配当利回りが高い、もしくはかつて高かった銘柄が並んでいることが分かります。

2.超有名企業が優良銘柄とは限らない

そして、他にも上記の銘柄に概ね共通している点として、次の2つが挙げられます。

  • 株価が低迷している銘柄が多いこと
  • どれも超有名な大企業であること

もちろん、上記のランキングは、NISA口座におけるものなので、長期保有を前提に高配当銘柄を選ぶというバイアスがかかりやすいことは否めません。

ただ、事前には分からないとはいえ、あえて株価が低迷するような銘柄を選びたいという投資家はいないでしょう。

そして、株式投資という観点からは、超有名な大企業が必ずしも優良銘柄であるとは限らないと言えます。

また、「高配当」という点ばかりに目を奪われてしまうと、「株式投資の目的」を見誤ることにもつながります。

3.「株式投資の目的」とは?

ここで本題に入る前に、「株式投資の目的」について簡単に触れておきたいと思います。

当然のことのように思われるかもしれませんが、私にとって株式投資は、利益を上げ、資産を築くための一つの手段という位置付けになります。

ただ、世の中には本人が意図して、あるいは意図せずとも、以下のような目的で株式投資を行っているとしか思えないような投資家もいるのです。

  • ギャンブルのように、株式投資で夢を買えればよい
  • 思考訓練の場として、ボケ防止になればいい

ですので、ここではそういった投資家のことは考慮せずに、あくまで株式投資で利益を上げることを目的とした投資家という前提で話を進めていくことにします。

4.利益の種類

株式投資に限った話ではありませんが、利益は大きく次の2つに分けられます。

  • インカムゲイン
  • キャピタルゲイン

インカムゲインというのは、配当金のように株式を保有していることで得られる利益のことで、キャピタルゲインというのは、株式の売買によって得られる利益のことです。

一般に、キャピタルゲインは変動が激しいのに対し、インカムゲインは概ね安定していると言えます。

そういったことから、副収入や年金代わりなどとして、インカムゲインの方をより重視する投資家が多いのも頷けます。

毎月分配型の投信が人気を博したのも、そうした背景があってのものだと言えるでしょう。

5.利益を区別すべきではない!?

ただ、そもそもインカムゲインであろうが、キャピタルゲインであろうが、利益を区別することに意味はないと考えています。

前述したように、キャピタルゲインの方が安定していて、確定した利益のように思えるかもしれませんが、実際にはそうとも言い切れないからです。

というのも、おそらく多くの投資家は、配当金のようなインカムゲインを得た場合に、それを再投資することになるはずです。

その場合、当然ですが、再投資した銘柄が上がる可能性もあれば、下落してしまう可能性もあるわけです。

これは、インカムゲインが再投資されて、将来のキャピタルゲインにその性質を変化させたと言えます。

つまり、インカムゲインというのは、実はキャピタルゲインと表裏一体のものであるということです。

ですから、高配当というインカムゲインばかりではなく、値上がり益というキャピタルゲインにも目を向けなければ、適切な銘柄選択は行うことはできないでしょう。

一見、当たり前のことのようですが、意外と盲点になりやすい事柄でもあるため、私たちも注意しておきたいところです。

株主優待株投資や高配当株投資はもはや有効ではない!?前のページ

リスクパリティ戦略は転機を迎えているか?次のページ

関連記事

  1. 投資戦略・手法・市場展望

    2020年IPO(新規株式公開)、初値大幅上昇銘柄の推移

    この記事では、2020年にIPO(新規株式公開)し、初値が大幅上昇した…

  2. 投資戦略・手法・市場展望

    オプション取引① コールとプット

    この記事では、オプション取引の概要や、コールとプットについて書いていま…

  3. 投資戦略・手法・市場展望

    リスクパリティ戦略は転機を迎えているか?

    この記事では、世界中の機関投資家に幅広く活用されている、リスクパリティ…

  4. 投資戦略・手法・市場展望

    株式市場はバブルか? そして、2月に調整局面を迎えるのか?

    この記事では、リディキュラス・インデックスやSPAC(特別買収目的会社…

  5. 投資戦略・手法・市場展望

    人工知能(AI)の進歩により、個人投資家は受難の時代となるか!?

    この記事では、機関投資家に利用が広がる人工知能(AI)についてや、個人…

電子書籍(3冊全て、Amazonランキング1位獲得)

「マーケットの魔術師」ならぬ「マーケットの詐欺師」

精神科医が暴く金融業界の裏側

 

勝者の心構え

精神科医が看破する投資の本質

 

 

 

この心理的罠からあなたは逃れられるか

精神科医が洞察する投資家心理

 

  1. 株式取引履歴

    【2023年8月】株式取引履歴(日本株・外国株)
  2. 相場のデータ・指標

    「東証REIT指数」のデータ分析(2018.12)(NAV倍率・分配金利回り・T…
  3. 投資戦略・手法・市場展望

    「米国株VS世界株」と「米国株VS先進国株」
  4. 相場のデータ・指標

    【2023年6月】「東証REIT指数」の最新データ分析(NAV倍率・分配金利回り…
  5. 読書録・書評

    【読書録・書評】『これからの低位株投資』
PAGE TOP