1.PMI(購買担当者景気指数)とは?
ここでは、米国、日本、中国のPMI(Purchasing Managers’ Index:購買担当者景気指数)について見ていきたいと思います。
PMIは、景気の先行指数として注目度の高いものですので、同じく景気の先行指標とされる「株価指数」との相関性があるかどうかを検証していくことにします。
PMIは、企業の購買担当者に、生産や新規受注、在庫、雇用などの状況をアンケート調査し、その結果を指数化したものです。
PMIでは、「50」が景況感の分岐点となり、50を上回れば景況感が良く(景気拡大)、50を下回れば景況感が悪い(景気減速)、とされます。
このPMIは、世界各国で集計・発表されており、また同じ国でも調査主体や調査対象が異なる複数のPMIがあったりします。
例えば、米国、日本、中国において、その一部を挙げると以下のようなものがあります。
米国のPMI
- ISM製造業PMI
- ISM非製造業PMI
- マークイット製造業PMI
- マークイットサービス業PMI
日本のPMI
- マークイット製造業PMI
- マークイットサービス業PMI
- 日銀短観(大企業製造業業況判断指数)
- 日銀短観(大企業非製造業業況判断指数)
中国のPMI
- 中国製造業PMI
- 中国非製造業PMI
- 中国財新(Caixin)製造業PMI
- 中国財新(Caixin)サービス業PMI
なお、PMIにおいては、一般的に製造業の動向が注目されます。
2.ISM製造業PMIとS&P 500
まずは、米国のPMIから見ていきます。
米国のPMIとして代表的なものが、ISM(Institute for Supply Management:供給管理協会)による、ISM製造業PMIです。
これは、米国の製造業の景況感を示す様々な経済指標の中でも、極めて注目度の高いものになります。
このISM製造業PMIの2007年2月以降の推移を、米国の代表的な株価指数であるS&P 500とともに示したのが次の図です。
視覚的にもそうですが、両者の相関係数は0.32とそこまで相関性があるわけではありません。
そこで、ISM製造業PMIとS&P 500の両者を前年比(%)で比較したのが以下の図になります。
この図からも明らかなように、両者は割と強い相関(相関係数:0.62)を認めています。
2019年初頭から、S&P 500 (前年比)の上昇と、ISM製造業PMI (前年比)の低下により拡大していた両者の乖離が、直近ではS&P 500の急落によって消失していることも見て取れます。
そういった意味では、今回のコロナショックによる株価の急落は、株価が景況感と反して上昇し過ぎていたことの反動という一面もありそうです。
3.マークイット製造業PMIとTOPIX
次に、日本のPMIとしては、英国の金融情報・調査会社である、IHS マークイット(Markit)社による製造業PMIを見ていきます。
このMarkit製造業PMIとTOPIXの、2007年9月以降の推移を示したのが、以下の図です。
また、同様に両者の前年比での推移を比較したのが次の図です。
こちらの方の図では、やや相関(相関係数:0.41)を認めるといったところでしょうか。
そして、この両者においては、直近で目立った乖離は生じていません。
4.中国財新(Caixin)製造業PMIと上海総合指数
最後に、中国のPMIとしては、IHS マークイット社と中国メディアグループの財新(Caixin)による中国財新(Caixin)製造業PMIを見ていきます。
以下の図は、Caixin製造業PMIと上海総合指数の、2010年1月以降の推移を示したものです。
これについても同様に、両者の前年比での推移を示したのが次の図になります。
これらに関しては、どちらもあまり相関を認めませんでした。
直近では、Caixin製造業PMIが急落から急回復を見せており、両者の乖離も縮小しています。
5.総括
直近では、中国のPMIが急落からの急回復を見せたことで注目されていました。
とはいえ、PMIはあくまでも前月と比較して景況感が改善しているかどうかを見るものです。
そのため、2020年3月のPMIが前月と比べて大きく改善しているように見えても、2月のPMIは過去最低値でもあったため、3月の景況感がそこまで大きく回復しているというわけではないのです。
そして、ここで見てきた各国のPMIは、株価指数と比較してみると、やはり株価の先行指標となり得るものではないことが分かります。
ただ、特に米国のPMI(ISM製造業PMI)に関しては、PMIとS&P 500を前年比で比較して、両者の乖離が拡大した際には、注目を要する指標だと言えるかもしれません。