ここでは、直近(2020年3月)の「ドル円相場」について、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。
1.日米10年国債利回りとドル円相場
まずは、米国の10年債利回りとドル円相場の推移を比較してみます。
この図から、米長期金利は1980年代より右肩下がりの傾向となっているのに対して、ドル円相場の方は、概ね横ばい(ボックス圏)での推移となっていることが分かります。
そういった意味では、米長期金利だけを見た場合には、ドル安円高の余地があると言えそうです。
次に、米国と日本の10年国債利回りの差をドル円相場の推移と比較したのが以下の図です。
こちらの図では、ドル円相場の動きが、日米の長期金利差と概ね連動していることが見て取れます。
そして直近では、長期金利差が急激に縮小し、ドル円相場の動きとの乖離も拡大しています。
2.購買力平価とドル円相場
次に、日米の購買力平価とドル円相場の推移を比較してみます。
なお、購買力平価(PPP)に関しては、日米の相対的購買力平価である、消費者物価PPP、企業物価PPP、輸出物価PPPを用いています。
この図からは、ドル円のレートは、企業物価PPPを上限、輸出物価PPPを下限として推移していた時期が長い中で、ここ数年は企業物価PPPより上での推移となっていることが分かります。
つまり、ドル円相場を購買力平価という観点から見た場合には、ドル安円高余地が大きいように思われます。
3.修正ソロスチャートとドル円相場
最後に、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)とドル円相場の推移を見ていきます。
この図からは、ドル円相場と修正マネタリーベース比率との乖離が縮小傾向にあることが分かります。
4.総括
ここまで見てきたように、日米10年国債利回りや、購買力平価では、依然として円高余地があるように見えます。
そして直近では、コロナショックにより、一時的に大幅な円高が見られ、NYダウや日経平均株価なども大幅に下落しています。
また、株式から債券へと資金が向かい、長期金利が急低下する局面もありました。
ただ、ボラティリティの高い状況が続いたため、足元では株式のみならず、債券や金(ゴールド)、ビットコインなども売られ、キャッシュ・ポジションを高める動きが見られます。
そうなると、長期金利も再度上昇に向かいそうですが、上昇余地は決して大きくはありません。
新型コロナウイルスの感染拡大による、世界的な景気後退懸念が強いためです。
さらに、FRBの大幅な追加利下げも予想され、それによる日米の金利差縮小も、円高圧力となりやすいでしょう。
今週は、17~18日にFOMC(米連邦公開市場委員会)、18~19日に日銀の金融政策決定会合が控えており、そこでどのような手が打たれるかに注目です。
おそらく、FRB(米連邦準備理事会)は利下げ、日銀はETFや社債、CP(コマーシャル・ペーパー)などの買い入れ目標の引き上げとなりそうです。