相場のデータ・指標

「東証REIT指数」のデータ分析(2019.9)(NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証1部株式の配当利回り・投信の資産増減状況)

ここでは、直近の「東証REIT指数」について、NAV倍率・分配金利回り・TOPIX・東証1部株式の配当利回り・投信の資産増減状況などといった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。

1.東証REIT指数とTOPIX

まずは、東証REIT指数とTOPIXの推移を見比べてみます。

東証REIT指数とTOPIXの推移を示した図(2019.9)

この図から、TOPIXと東証REIT指数は強い相関を認めることが見て取れます。

また、2017年頃から拡大していた両者の乖離も、TOPIXの下落および、東証REIT指数の上昇によって縮小したことが分かります。

この図からも明らかなように、東証REIT指数は底堅い値動きをしていると言えます。

2.東証REIT指数とNAV倍率・分配金利回り

次に、東証REIT指数をNAV倍率や分配金利回りといった点から見ていきます。

まずは、NAV倍率の方からです。

東証REIT指数とNAV倍率の推移を示した図(2019.9)

NAV倍率ですが、ここ1~2年ほどは、一般的に割安の基準であるとされる1倍に近い水準(赤い点線)から上昇傾向となっています。

直近のNAV倍率は1.15倍程度で、決して高くはない水準であることから、東証REIT指数にはまだまだ上昇余地があると言えそうです。

そして、分配金利回りの推移についても見ていきます。(見やすくするために、右軸にある分配金利回りのスケールは反転させてあります。)

東証REIT指数と分配金利回りの推移を示した図(2019.9)

直近のJ-REIT分配金利回りは4%前後での推移となっていますが、この図で示した過去約15年間の推移を見る限りでは、この4%という水準はそこまで高いものではないように見えます。

また、ここ1~2年で見ると、東証REIT指数が上昇していくなかで、分配金利回りはほぼ横ばいでの推移となっており、REITの収益力が高まっていることが推測されます。

3.各種利回りの比較

さらに、REITの分配金利回りは、株式の配当利回りや長期金利(10年国債利回り)などとの関係で決まってくる面もあると思われるため、それらの比較をしたのが以下の図になります。

分配金利回り、配当利回り、長期金利の推移を比較した図(2019.9)

ここで、長期金利(10年国債利回り)に関しては、日銀の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」などにより、直近では-0.2%台での推移となっています。

つまり、ここ数年の長期金利は少なからずコントロールされたものであると言え、比較対象として適切なものかどうかは疑わしいものであるため、ここではJ-REITの分配金利回りと東証1部株式の配当利回りとを比較してみます。

このJ-REITの分配金利回りと東証1部株式の配当利回りとのスプレッド(利回り差)の推移を示したのが以下の図です。

分配金利回りと配当利回りのスプレッドの推移を示した図(2019.9)

この図で示した過去約15年間の推移を見る限りでは、両者のスプレッドは低い水準にあると言えます。

そういったことから、株式と比較して見た場合に、REITにはまだそこまで投資妙味があるというわけではなさそうです。

4.投資信託の資産増減状況と東証REIT指数

なお、東証REIT指数を構成しているJ-REIT市場における主な投資家としては、日銀や投資信託、海外投資家が挙げられます。

そして、東証REIT指数の推移は、その中でも投資信託の資産増減状況との関連が比較的強いため、その影響についてここでは見ていきます。

具体的には、投資信託の商品分類のうち、「毎月決算型」、「国内 不動産投信」の2つについてです。

まずは、「毎月決算型」の方からになります。

この「毎月決算型」を見るのは、分配金を毎月出す投信にとって、相対的に利回りの高いREITというのは、都合が良いためです。

東証REIT指数と毎月決算型投信の推移を示した図(2019.9)

ここ数年間は、「毎月決算型」投信からの資金流出がずっと続いていましたが、2019年に入ってからの純資産総額はほぼ横ばいとなっています。

この図からは、2017年末頃から両者の乖離が拡大していることが見て取れます。

続いて、「国内 不動産投信」になります。

東証REIT指数と国内不動産投信の推移を示した図(2019.9)

「国内 不動産投信」は資金流入傾向となっており、純資産総額も過去最高を更新しています。

また、それと連動するように東証REIT指数も上昇していることが見て取れます。

5.総括

ここでは、東証REIT指数を、各種指標と比較して見てきました。

それによると東証REIT指数は、NAV倍率からは依然として割安な水準にあるように見えます。

一方で、TOPIXとの比較や、J-REIT分配金利回りの水準、東証1部株式配当利回りとの比較では、そこまで割安な水準であるようには見えませんでした。

あとは、「国内 不動産投信」への資金流入が、今後も継続していくのかどうかが焦点となりそうです。

最近では7月に、FRB(米連邦準備理事会)が10年半ぶりとなる、政策金利の引き下げ(0.25%)を行い、今月9月17~18日のFOMC(米連邦公開市場委員会)でも追加利下げが見込まれています。

また、世界的な低金利環境を背景に、日本や米国などの企業による、低利での社債発行が急増しています。

さらに、ここ1ヵ月ほどは、不動産株も力強い値動きを示しています。

そういったことなどから、イールド・ハント(利回り狩り)目的やキャピタルゲイン狙いの資金が、REIT市場にさらに流入してくることも十分に考えられます。

一方で不動産価格は、株価に対して1~2年ほど遅れて動くことが多いため、株価が軟調な展開が続くようだと、警戒が必要になってくるでしょう。

そして、相場環境が厳しくなってくると、REITの中でも上がるものと上がらないものの差が広がっていく、つまり選別が進んでいくことが予想されます。

となると、利回りという点ではREITに劣るものの、不動産の質という点ではREITに勝る、大手不動産株や鉄道株の方が投資妙味が増していくのではないかと考えています。

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