前回の記事(以下)では、米国株における、バリュー株指数とグロース株指数とを比較しました。
今回は、日本株において同様の比較をしていきたいと思います。
具体的には、「Russell/Nomura 日本株インデックス(ラッセル/ノムラ日本株インデックス)」のバリュー株指数とグロース株指数を利用して見ていきます。
Contents
1.Russell/Nomura 日本株インデックス
「Russell/Nomura 日本株インデックス」というのは、日本の株式市場を対象とした、以下の図にあるようなサブインデックスの総称になります。
例えば、「Total Market インデックス」は、全上場銘柄のうち、時価総額(浮動株調整)が上位98%の銘柄からなります。
そして、ここではこれらのうち、時価総額で上位85%の銘柄からなる「Large Cap インデックス」について見ていきたいと思います。
というのも、前回記事の米国株における、バリュー株指数とグロース株指数の比較で用いた「ラッセル 1000 指数」は、米国株式市場全体の時価総額で上位90%からなる指数でした。
一方、日本株を対象とした場合には、この「ラッセル 1000 指数」に最も近いと思われるのが、「Large Cap インデックス」になるためです。
2.バリュー株指数とグロース株指数
また、上図で示した全てのサブインデックスについて、それぞれバリュー(Value)・グロース(Growth)の投資スタイル別のサブインデックスが用意されています。
つまり、ここで用いる「Large Cap インデックス」で言えば、「Large Cap インデックス(以下、Large)」の他に、「Large Cap Value インデックス(以下、Large バリュー)」と「Large Cap Growth インデックス(以下、Large グロース)」があるということになります。
そして、このバリューとグロースの分類には、修正PBR(株価純資産倍率)というものが使われいます。
なお参考までに、修正PBRは以下の式で計算されますが、簿価と市場評価額との乖離を少なくするための修正といった程度の理解で構わないでしょう。
修正PBR=株価 × 発行株式数 /(自己資本+有価証券含み損益-未認識退職給付債務)
この修正PBRの高低によって、各銘柄におけるバリューとグロースに振り分ける時価総額の割合が決定されます。
これは、「バリュー100%」となる銘柄もあれば、「バリュー30%、グロース70%」となる銘柄もあり、後者の銘柄では時価総額の30%がバリュー株指数に、70%がグロース株指数に属するということです。
ちなみに、2018年11月20日時点における「バリュー100%」あるいは「グロース100%」の代表的な銘柄には、それぞれ次のようなものがあります。
バリュー100%の銘柄
グロース100%の銘柄
3.バリュー株指数とグロース株指数の比較方法
それでは、まず「Large」と「Large バリュー」、「Large グロース」の推移を見ていきます。
この図から、日本株においては長期で見た場合に、バリュー株指数がグロース株指数を大きくアウトパフォーム(収益率で上回っている)ことが分かります。
そして、さらに細かく両者を比較する方法としては、主に以下の3つの方法があります。
まずは、単純に「Large バリュー」を「Large グロース」で割る方法です。
次に、「Large バリュー」と「Large グロース」のそれぞれについて、1年リターンを求め、その差を算出する方法です。
最後に、「Large バリュー」と「Large グロース」のそれぞれについて、「Large」に対する超過収益率を算出して比較する方法です。
ここでは、これら3つの方法について、順を追って見ていくことにします。
4.バリュー株指数/グロース株指数
まず、「Large バリュー」を「Large グロース」で割った値の推移を示したのが、以下の図です。
この図から、概ね2009年央以降では、グロース株指数が優位となっているのが見て取れます。
5.バリュー株指数とグロース株指数の1年リターンの差
次に、「Large バリュー」と「Large グロース」の1年リターンの差を示したのが、下図になります。
先ほどの図と比較して、バリュー株指数とグロース株指数のどちらが優位な状況になっているかの、細かい傾向が視覚的に捉えやすくなっていると言えます。
この図からは、直近で両者はほぼ拮抗していることが分かります。
6.「Large Cap インデックス」に対する超過収益率
最後に、「Large バリュー」と「Large グロース」のそれぞれについて、「Large」に対する超過収益率の推移を示したのが、以下の図です。
やはりこの図からも、長期で見た場合には、バリュー株指数がグロース株指数を大きくアウトパフォームしていることが見て取れます。
また、この図におけるバリュー株指数の超過収益率の推移は、1番目に示した、バリュー株指数をグロース株指数で割った値の推移とよく似通っていることも分かります。
7.総括
ここでは最後に、バリュー株指数をグロース株指数で割った値の推移を、「Large Cap インデックス」および「10年国債利回り」と比較してみます。
(なお、下図ではともに、見やすくするために、バリュー/グロースの推移(右目盛り)を反転しています。)
すると、「10年国債利回り」との比較では、特に示唆を得ることはできませんでした。
一方、「Large Cap インデックス」との比較では、2000年央からのITバブル崩壊や、2008年9月のリーマン・ショック後のように、相場の急落に伴って、バリュー株指数が優位となっていることが見て取れます。
また、相場が回復していく局面では、逆にグロース株指数が優位となる傾向も、多少はありそうだと言えます。
ここで、今年1月の政府による景気判断は、「緩やかに回復している」とのことで据え置かれましたが、そうなると現在の景気回復局面は、74か月(12年12月~19年1月)で戦後最長ということになります。
つまり、いつ景気後退が訪れても不思議ではありません。
さらに、一般的に「株価は景気の先行指数」と言われることを考えると、既に株価の調整局面を迎えている可能性すらあると言えます。
そうなると、今後、株価調整に伴って、バリュー株指数が優位となってくるかもしれません。
もちろん、株価が調整すると、バリュー株指数も下落しますので、あくまでグロース株指数に対して優位であるに過ぎないということには注意が必要です。
とはいえ、今後、株価が調整していく局面があれば、バリュー株指数に属するような低PBR銘柄に投資妙味が出てくるのではないかと考えています。