ここでは、『インベスターZ』という漫画(全21巻)について、以下の1~6巻のレビューを書いていきたいと思います。
1.漫画の概要
まずは、漫画の概要からです。
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、個別株、漫画
『インベスターZ』は、『ドラゴン桜』という漫画でブレイクした三田紀房氏による、投資をテーマにした漫画です。
ここでは、漫画のあらすじやストーリーについては触れずに、投資に関係する部分だけを一部抜粋しながら、レビューしていきたいと思います。
まず、第1巻では、ギリシャの「アテナイのコイン」流通や、オランダの東インド会社による世界初の株式会社設立など、お金や金融の歴史について触れられています。
2.株は法則でやれ
第2巻では、「株は法則でやれ」とのことで、利食いと損切りに関して、「株価が上昇して20%に達したら売り、逆に10%下がったら売る」ということが書かれています。
また、行動経済学の理論の一つであるプロスペクト理論を取り上げ、例えば初めに50万円損した時の精神的ダメージに比べて、追加で50万円損した時の精神的ダメージは少なくなると説明しています。
そのため、株価が下がり続けても、売るに売れずに長期保有して、「塩漬け」になりやすいというのです。
そして、1848年頃に米国カリフォルニアで起きたゴールドラッシュについても触れられています。
それは、金鉱を目当てに採掘者が殺到しましたが、最終的に一番儲けたのは、採掘道具を売った人間や、鉄道を敷いた実業家(リーランド・スタンフォード)であったという話です。
つまり、「金が出たからといって大勢の人の後にくっついて、金を掘ったヤツに金持ちはいない!」ということです。
そこから、例えば円高で不振となっている輸出株のように、良い株を探すにはその時に誰も見向きもしない「ボロ株を見ろ!」と話が展開されています。
3.バフェットの金言
第3巻では、世界的に著名な投資家である、ウォーレン・バフェットの生い立ちや金言について書かれています。
バフェットの金言というのは例えば、「分散投資は無知に対するリスクヘッジだ」、「リスクとは自分が何をやっているか分からない時に起きる」、「その企業について論文を一本書けなければ株を買ってはいけない」などといったものです。
つまり、自分に確固たる信念を持てるまで徹底的に企業をリサーチせよということです。
しかし、この第3巻には書かれていませんが、バフェットは、中途半端な勉強や研究で個別銘柄への投資に手を出すくらいなら、集中投資ではなく、分散投資をすることを勧めています。
実際にバフェットは、2014年に自社の株主への手紙の中で、「自分の遺産は、10%を短期米国債、残りの90%をS&P 500インデックス・ファンドに投資するよう指示した」と書いています。
後の巻にこうしたことが書かれているのかもしれませんが、集中投資の方が必ずしも優れているというわけではなく、ここだけを読むと誤解を招きそうだと感じました。
そして、第3巻では他にも、「大きな利益を上げる秘訣とは、現在の株式市況に異議あり!と申し立てること」であり、みんながすでに評価してしまっている株は割安ではなく買っても意味がない、といったことも書かれています。
しかし当然ですが、評価の高い大企業でも、金融危機に巻き込まれるなど、タイミングによっては割安になることもあります。
また、株価の波に乗って利幅を取っていく「うねり取り」のような投資手法では、皆に評価されている大企業の方がやりやすかったりするという面もあります。
ですので、ここに書かれていることは、あくまで投資に対する一つの見方に過ぎないものだと割り切る必要があるでしょう。
4.株は「でっかい市場」を狙え
第4巻では、「市場規模を見比べるだけで世の中の仕組みが見えてくる」ということが書かれています。
まず、世間によく知られていて、特に若者受けする業界・業種ほど市場は小さく、経済力は弱いということで、例えば、日本の映画産業は1900億円、ゲーム産業は8000億円といった具合です。
それに対し、セブンイレブンは、グループ全体で9.5兆円もの売上があるなど、地味に見える産業が思った以上に大きかったりするというのです。
具体的には、自動車市場は50兆円、家電60兆円、建築50兆円、外食30兆円、医療40兆円、生命保険40兆円という数字が挙げられています。
そして第4巻には、「市場が大きければ、プレイヤーの数も多く、市場内のお金の流通も活発になる。情報も多いし、分析もしやすくなる」、「株は「でっかい市場」を狙え」という内容もあります。
ただ、「情報が多く分析しやすい」から、「利益を上げやすい」というわけではないことには注意する必要があるでしょう。
なぜなら、そういった市場や企業というのは、多くのアナリスト(分析家・評論家)がカバーしており、第3巻に書いてあるような「現在の株式市況に異議あり!と申し立てる」ことができるような状況というのが限られてくるためです。
5.無名の優良企業
第5巻では、世の中には無名だが、優良な企業がたくさんあるということが書かれています。
例えば、「日本には創業100年以上の会社が5万社もあり、このうち9割は従業員300人未満の中小企業」、さらに「創業200年以上の会社は世界で5586社だが、そのうち日本企業はなんと3146社で、そのほとんどが無名の中小企業」だというのです。
そして、「本当はこういう企業こそ知っておかないといけないし、知らないことは損をしていることにもなる」と書かれています。
一方で近年は、中小企業の後継者不足が深刻化しており、大廃業時代が到来すると言われています。
その流れに乗って、M&A関連企業の業績が好調となっていますが、そうなるとやはり有望な企業を買収するだけの体力のある大企業が優位に足ってくるのではないかと思わなくもありません。
6.投資は個で行う
第6巻では、「投資は常に個で行う」ことが、投資の絶対的原理原則だと書かれています。
それは、皆で相談して決めると、お互いの意見を取り入れたり、擦り合わせたりして、結局、中途半端な決定となり、思い切った決断を下せないからだといいます。
決めるのは常に自分であり、理念や信念をしっかり持つことで、思い切った決断や行動が取れるのです。
また、第6巻では、ベンチャー事業への投資についての内容もあり、「ベンチャー事業で成功するということは、ファーストペンギンになるということだ!」と書かれています。
ファーストペンギンというのは、不確実な状況下で、勇気を持って新しいことにチャレンジすることを指し、そういった意思や行動というのが、投資においては少なからず必要なものとなってきます。
そして、個別株への投資において、不確実な状況下でも自分の信念を貫くためには、その企業や業界について分析し、その将来の見通しに対する自分なりの結論を導き出すことが大事になってくるのではないかと考えています。