ここでは、直近の「ドル円相場」について、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。
1.日米10年国債利回りとドル円相場
まずは、米国の10年債利回りをドル円相場の推移を比較してみます。
次に、米国と日本の10年国債利回りの差をドル円相場の推移と比較したのが以下の図です。
直近では、米国の財政赤字拡大やFRBの保有資産縮小などの影響から、米10年国債利回り(長期金利)は上昇傾向となっていました。
一方の日本では、日銀の政策(長短金利操作付き量的・質的金融緩和)により、長期金利は概ね0%程度での推移となっており、この傾向はしばらく続くでしょう。
ここで、長期金利というのは、経済・景気の見通しや将来の物価変動予測の影響を強く受けます。
そして米国では、大型減税により経済が上向くことが期待されていましたが、米国の実質GDPは2017年4Q(10~12月)の2.6%増から、2018年1Q(1~3月)の2.3%増へと減速しています。
こういったことを考えると、米長期金利のさらなる上昇は現状では考えにくく、上の図(特に米10年国債利回りの推移)との比較では、円高余地があるように思われます。
2.購買力平価とドル円相場
次に、日米の購買力平価とドル円相場の推移を比較してみます。
なお、購買力平価(PPP)に関しては、日米の相対的購買力平価である、消費者物価PPP、企業物価PPP、輸出物価PPPを用いています。
この図からは、ドル円のレートは、企業物価PPPを上限、輸出物価PPPを下限として推移していた時期が長く、そう考えると、購買力平価に関しても円高余地の方が大きいように思われます。
3.修正ソロスチャートとドル円相場
最後に、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)とドル円相場の推移を見ていきます。
この図からは、ドル円相場と修正マネタリーベース比率の推移との乖離は縮小傾向であるものの、ドル円のレートにはやや円高余地があるように思われます。
4.総括
ここでは、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から、ドル円相場について見てきました。
そして、その全てで円高余地があるように見えました。
また今後、景気減速に伴ってFRBの利上げペースが鈍化する可能性も十分に考えられ、そうなると円高方向に傾きやすくなると思われます。
さらに、FRBの利上げにより短期金利が上昇しており、日本の機関投資家などの外貨資産に対する(ドル売りの)ヘッジコストが上昇することから、そうしたドルのヘッジ売りが直近ではかなり減少しているはずです。
そのため、仮に円高の流れが鮮明なものになったとすると、機関投資家などが急速にヘッジ売りを膨らませてくると考えられます。
つまり、ここからある程度の円高が進むと、その流れがさらに加速しやすいと予想されます。
2018年後半は急激な円高に警戒が必要となるのではないでしょうか。