Contents
1.NT倍率とは?
NT倍率のNTのうち、NはNikkei225(日経平均株価)、TはTOPIX(東証株価指数)の頭文字をとったもので、NT倍率は日経平均株価をTOPIXで割ることによって算出されます(以下のような計算式になります)。
NT倍率=日経平均株価/TOPIX
この式からも分かるように、NT倍率というのは日経平均株価とTOPIXとを比較したものになります。
そして、この日経平均株価やTOPIXは株価指数といって、ともに日本の株式市場の状況を表すものであることに変わりはないのですが、いくつか異なる点があります。
NT倍率について見ていく上でもこ両者の違いを理解しておく必要がありますので、まずはそれぞれの特徴や違いについて書いていきたいと思います。
2.日経平均株価とは?
まず、私たちが普段からよく耳にする日経平均株価の方からですが、これは株式市場に上場する全銘柄を対象としたものではなく、東証1部上場企業の中から選ばれた225銘柄を対象としています。
この225銘柄は日本経済新聞社が選定しており、市場流動性の高い銘柄が業種ごとにバランスよく選ばれています。
市場流動性が高い銘柄というのは、換金や現金化がしやすいということで、すなわち出来高や売買高が多い銘柄のことを指します。
そして、日経平均株価はその225銘柄の株価を合計して225で割った単純平均と考えてほぼ差し支えありません。
※正確には、株式分割などの影響を修正する必要があるため、もう少し複雑な計算となります。
3.TOPIXとは?
一方のTOPIXですが、こちらは東証1部上場の全銘柄を対象としています。
また、TOPIXでは単純平均ではなく加重平均といって、時価総額(株価×発行済み株式数)を加味して算出されます。
具体的には、1968年1月4日(基準時)時点での東証1部上場全銘柄の時価総額の合計を100ポイントとして、算出時点での時価総額の合計が基準時と比較していくつになっているかを表したもので、以下の計算式で求められます。
TOPIX=算出時の東証1部時価総額/基準時の東証1部時価総額×100
一般的に、単純平均型よりもTOPIXのような加重平均型の方が市場全体の実態に即しているとされます。
なお、TOPIXに関しても正確には、時価総額の計算に発行済み株式数ではなく浮動株式数を用いたりするなど、もう少し複雑な計算となるのですが、大まかには上記のように考えるものとします。
4.日経平均株価とTOPIXの違い
さて、これらを踏まえて両者の違いを見ていきます。
まず、日経平均株価は単純平均型のため、値嵩株(ねがさかぶ)といって株価水準の高い銘柄の影響を受けやすいのに対し、TOPIXでは時価総額の大きい銘柄を影響を受けやすくなります。
例えば、日経平均株価採用銘柄の値嵩株には、ファーストリテイリング、ファナック、東海旅客鉄道、東京エレクトロン、ダイキン工業などがあります。
一方、東証1部の時価総額ランキング上位には、輸送用機器(トヨタ、ホンダなど)、情報・通信(NTT、NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI)、銀行(三菱UFJ、ゆうちょ銀、三井住友FG、みずほFG)といった業種が目立ちます。
次に、日経平均採用銘柄には輸出企業が多くなっているので、為替変動の影響を受けやすいと言われることがあります。
以下は、日経平均株価とTOPIXおよびドル円のチャートを示したものですが、確かに言われてみれば円安局面では日経平均株価の方がTOPIXよりもやや強い動きをしているように見えるといった程度です。
日経平均株価とTOPIXおよびドル円の推移(1991年1月~)
5.日経平均株価とNT倍率
それでは、ここからは日経平均株価とNT倍率の推移を見ていきます。
日経平均株価とNT倍率の推移(1991年1月~)
これを見ると、NT倍率は9~14で推移しており、大まかにではありますが、NT倍率がピークアウトした際に、日経平均株価もピークアウトしているように見えます。
そして、以下が直近の2016年1月からの日経平均株価とNT倍率の推移を示したものになります。
日経平均株価とNT倍率の推移(2016年1月~)
これを見ると、今年の6月頃からNT倍率が大きく下がっているのが分かります。
これには、値嵩株が売られ、時価総額の大きい銘柄が買われているという傾向や、為替の影響もあるかもしれませんが、別の要因も考える必要があります。
というのも、日本の株式市場ではヘッジファンドなどの外国人投資家の影響が大きいためです。
そして、外国人投資家は日経平均先物やオプションを利用することが多いのですが、ちょうどNT倍率が下落に転じている今年の6月頃からは、外国人投資家の売買動向が売り越しに傾いているのです。
また、日本銀行がETF(上場投資信託)の買い入れを行っている影響も無視できません。
日銀によるETF買入枠は、2013年4月に年間1兆円への拡大、2014年10月に年間3兆円への拡大、2016年7月には年間6兆円への拡大が決定されていました。
そのETF買入枠の内訳に関しても、2016年9月にはTOPIX連動型の買入れ比率が42%から70%へと変更されています。
このように、NT倍率を見る際には様々な要因を考慮する必要があるのですが、特にこの日銀によるETFの買い入れというのは過去に例のないことです。
そのため、NT倍率をこれまでと同様に評価してよいのかは微妙なところですが、NT倍率の下落に伴う日経平均株価の下落には注意が必要かもしれません。