1.ギャンブルとは何か?
投資がギャンブルだというのは、投資に関してよく言われることの一つではないでしょうか。
やはり投資というと、一獲千金を狙えるギャンブルのようなものというイメージがある人も少なくないのかもしれません。
投資が、一獲千金を狙うようなものではなく、また楽して稼げるものでもないということについては、投資の利益は不労所得か?のところで書いた通りです。
そして、投資はギャンブルか?という問いに対して結論から先に言ってしまうと、投資もやりようによってはギャンブルと変わらないものになってしまうということです。
それは、ギャンブルの定義を考えてみれば分かります。
ギャンブルとはお金や物を賭けて勝負を争う遊戯のことですので、投資もやりようによっては当然ギャンブルとなってしまうのです。
もちろん、遊戯であれば別にハイリスクな賭けをして、スリルを楽しむというのは一向に構いません。
同様に、投資においてもスリルを楽しむことが目的であるのならば、ハイリスクな取引をしても全く構いません。
2.相場から何を得るか?
しかし、少なくとも私はスリル目的に投資をしているわけではないですし、この記事を読んで下さっているあなたもおそらく同じ考えではないかと思います。
むしろ、人によってはスリル目的に投資をしている人なんて本当に存在するのかと疑問に思われるかもしれません。
ここでですが、1970~80年代において世界有数のトレーダーの一人とされたエド・スィコータは、次のようなことを言っています。
「勝っても負けても、皆自分の欲しいものを相場から手に入れる。負けるのが好きなように見える人もいる。だから、彼らは負けることによって手に入れるのだ。」
これは実に含蓄に富む言葉です。
常識的に考えれば、相場に参加する人は皆、利益を上げることを望んでいるはずです。
しかし、この言葉に照らし合わせてみると、相場で収益を上げることよりも、大きな損失のリスクを負ってでも相場でスリルという楽しみを得ようとしているように見える人がいるということになります。
確かに投資家の中には、自らが意識するしないにかかわらず、相場でスリルを求めているとしか思えないような人が少なくありません。
投資で一獲千金を狙うような人たちがまさにそうであり、こういった人たちに対してはあえて何か言うつもりもありません。
ただ、無知であるがために、自身は投資をしているつもりでも、結果的にギャンブルと全く変わらないものとなってしまっているという場合も多々あるのです。
投資で長期にわたって収益を上げていったり、資産を防衛することを目的とするのであれば、リスク管理をしていくことは必須ですし、そのやり方を学ぶ必要があります。
投資では、いかにリスクを抑えつつ収益を上げていくかというのが重要な課題であり、そこにはスリルを楽しむといった要素は微塵もないのです。
3.投資のパフォーマンスの目安
また、投資ではどのくらいのパフォーマンス(運用成績)を目指すのかも大事になってきます。
あまりに高過ぎる目標を設定していると、ギャンブルとなってしまう危険性があるためです。
投資手法にもよりますが、一般的な長期投資であれば(1年や2年といった短期ではなく、10年や20年といった長期でみて)、平均年利10%を達成できれば十分に一流の投資家であるといえます。
もちろん、なかには1年間で数倍、つまり年利100%とか200%、場合によってはそれ以上のパフォーマンスを上げるような人もいます。
ただ、それもずっと継続できるわけではありません。
そして、長期にわたって安定的に収益を上げ続けることを目指すのであれば、そんな並外れたパフォーマンスを目指すべきでもありません。
ですから、平均年利で5~10%を目指すというのが、相場へ取り組むにあたっての正しい姿勢であるといえます。
そうなると、とてもじゃありませんが、投資で一獲千金というわけにはいきません。
結果として一獲千金を達成することはあるかもしれませんが、一獲千金を狙って投資をするというのは健全な姿勢ではないのです。
実際、相場で生計を立てているような人たちというのは、自分のやるべきことを淡々とこなしており、一般に想像されるよりもずっと地味な世界なのです。
4.投資とギャンブルのコスト比較
なお、ここからは参考までに投資とギャンブルをコストの面から比較してみたいと思います。
まずはギャンブルから見ていきますが、ギャンブルにおけるコストに当たるのは、主催者ないし胴元が取る運営料で、控除率で表されます。
具体的には、パチンコでは5~10%、競馬、競艇、競輪、オートなどの公営競争では約25%、そして宝くじでは何と50~55%にもなります。
これを見ると、「宝くじは愚か者に課せられた税金」と言われるのも確かに一理あります。
また、同じギャンブルの中でも、ルーレットやバカラなどのように、控除率が数%前後と低く設定されているものもあります。
一方の投資のコストに関してですが、投資においても金融商品によって手数料には大きな差があります。
例えば、不動産投資では購入時のコストが割と高く、また保有している間も固定資産税などの税金が毎年かかってきてしまいます。
もう少し具体的にいうと、不動産購入時には、仲介手数料や不動産取得税、登録免許税、建物の消費税などがかかってきます。
これらは、土地と建物を区別して計算されるので、一概には言えないのですが、おおよそ不動産価格の10%前後のコストが購入時にかかってくるといえます。
そして、購入後も固定資産税や、ローンを組んで購入している場合には金利の支払いも生じてくるので、全て含めると不動産価格の数%程度が毎年かかってくるものと思われます。
次に、不動産以外の実物資産についてですが、これには、クラシックカーやワイン、アンティークコイン、切手、絵画などのアート作品、時計、宝石などがあります。
これらの仲介業者の手数料は、アンティークコインでは約10%前後、絵画では40~50%などといわれていますが、以上から不動産を含めた実物資産では、高い手数料がかかってくるということが分かります。
それに対して、株式や為替、先物などの一般的な金融商品に関しては、1%未満の手数料で済むものがほとんどです。
ですから、コストの面からみると、株式や為替、先物などはかなり有利なものであるといえます。
もっとも、ギャンブルをするときに、コストを意識したりするような人はほとんどいないのかもしれませんが。
ただ一方で、世の中にはパチンコや競馬などで生計を立てている人たちもいます。
高いコストを支払ってでも、そういったギャンブルで安定して稼ぎ続けているというのは驚くべきことですが、彼らに共通するのは、やはり徹底したリスク管理を行っているということです。
彼らは決して、一獲千金を狙ってスリルを追い求めるようなことはせず、むしろそれとは真逆の姿勢で取り組んでいます。
投資をする際も、彼らと全く同様であるべきです。
投資も一歩間違えればギャンブルとなってしまいますが、投資でもギャンブルでも勝ち続けるためには、徹底したリスク管理が重要だということなのです。