ここでは、直近の「日経平均株価」について、PER・PBR、海外投資家売買動向、日銀ETF買い入れ、信用評価損益率、騰落レシオといった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.PER・PBR
まず、日経平均株価に採用されている企業の平均PER(株価収益率)についてです。
この平均PERと日経平均株価の値から、平均EPS(一株当たり当期純利益)を求め、その平均EPSに13~17の数値を掛け合わせて、PER 13~17倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに表したのが以下の図になります。
なお、この図の2020年5月以降では、新型コロナウイルスの影響により、業績予想の開示を見送る企業が相次いだため、日経の予想が作成されるまでの間、利益をゼロとして平均PERが算出されていました。
そして直近で、PERは16.2倍(6月20日時点)での推移となっています。
次に、平均PBR(株価純資産倍率)についてです。
PERと同様に、平均PBRと日経平均株価から平均BPS(一株当たり純資産)を求め、そこから導き出したPBR 1~1.5倍に相当する株価の推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
平均PBRは6月29日大引けの時点で、1.45倍となっています。
2.海外投資家の売買動向・日銀のETF買い入れ
次に、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)から、海外投資家の売買動向について見ていきます。
海外投資家の売買代金の差引き金額を累計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図です。
海外投資家の売買動向は、ここ最近は割と大きな買い越し傾向となっていましたが、直近では5月第4週から6月第2週まで、4週連続での売り越しとなっています。
また、日銀のETF買い入れについても見ていきます。
ここでは、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象としたETFを含む、日銀の買い入れている全てのETFの累計額を見ています。
この日銀によるETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
なお、日銀のETF買い入れは、24年3月の金融政策決定会合にて終了することが決定されていました。
そして、日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額とを合計したものの推移を、日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
この図から分かるように、両者を合計したものは、日経平均株価と非常に強い相関を認めています。
ちなみに、海外投資家から見た日経平均株価である、ドル建て日経平均株価は次のようになっています。
円安ドル高が進んでいることもあり、ドル建て日経平均は、日経平均株価と比較して、そこまで割高感は強くないと言えます。
3.信用評価損益率
続いて、信用評価損益率を見ていきます。
以下の図は、信用評価損益率(2市場(東証と名証))と日経平均株価の推移を示したものです。
一般に、信用評価損益率では、「-3~0%以上で天井圏」、「-15~-20%以下で底値圏」という見方がされます。
信用評価損益率は、直近の6月14日時点では、-6.07%となっています。
なお、信用評価損益率では信用買い建玉のみの損益を見ており、空売りの損益は反映されていません。
4.騰落レシオ
最後に、25日騰落レシオについても見ていきます。
騰落レシオの推移を日経平均株価とともに示したのが以下の図になります。
騰落レシオは、6月20日時点で102.64となっています。
5.総括
ここ2ヵ月ほど、日経平均株価は、37500~39500円でのレンジ相場となっています。
日本株の上値が重い背景としては、やはり海外要因が大きそうです。
米国では、経済指標が少しずつ軟化しつつあるように思われ、欧州でもフランスを中心に政治情勢の不透明感が増しています。
そして、財務省のデータによれば、24年の1~4月までに海外投資家は日本株を約5兆円買い越しましたが、その8割近く(3兆9000億円)を英国が占めるとのことです。
何らかのきっかけにより、こうしたマネーが逆回転すれば、日本株は急落することになり、警戒が必要となりそうです。
当面は、日経平均株価がレンジの上限に近づいたら、少しずつ利益確定を進め、現金比率を高めておくのが良策ではないでしょうか。