ここでは、直近の「ドル円相場」について、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。
1.日米10年国債利回りとドル円相場
まずは、米国の10年債利回りとドル円相場の推移を比較してみます。
この図から分かるように、米長期金利は1980年代より右肩下がりの傾向となっていましたが、ここ数年で急反発していました。
一時5%超を付けた米長期金利は、直近では4%台前半での推移となっています。
次に、米国と日本の10年国債利回りの差をドル円相場の推移と比較したのが以下の図です。
こちらの図では、ドル円相場の動きが、日米の長期金利差と概ね連動していることが見て取れますが、直近では両者の乖離が拡大しています。
2.購買力平価とドル円相場
次に、日米の購買力平価とドル円相場の推移を比較してみます。
なお、購買力平価(PPP)に関しては、日米の相対的購買力平価である、消費者物価PPP、企業物価PPP、輸出物価PPPを用いています。
この図からは、ドル円のレートは、企業物価PPPを上限、輸出物価PPPを下限として推移していた時期が長い中で、ここ数年は企業物価PPPより上での推移となっていたことが分かります。
さらに、2022年以降、ドルの円レートが消費者物価PPPを大きく超える動きとなっており、直近においてもその状態が継続しています。
3.修正ソロスチャートとドル円相場
最後に、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)とドル円相場の推移を見ていきます。
この図からは、ドル円相場と修正マネタリーベース比率との相関性が高いことと同時に、最近では両者の乖離が拡大していることが分かります。
4.総括
ドル円相場は、4月末に一時160円を超え、その後、政府・日銀による為替介入をきっかけに152円を割る場面もありましたが、直近では再び157円台にまで円安が進んでいます。
6月11~12日のFOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利の据え置きが決定され、続く13~14日に開かれた日銀の金融政策決定会合では、市場が予想していた国債買い入れの減額が見送られる結果となりました。
また、投機筋の円売りポジションは依然として大きいことや、円が米ドル以外の通貨に対しても弱いことから、低金利の円を調達してのキャリートレードが、広く行われているものと思われます。
さらに、ドル円の需給構造を見ると、インバウンドの黒字以上に、デジタル赤字が多く、新NISAにより増加した外貨建て資産への投資も円売り圧力となります。
粘着質なインフレや日銀の慎重な金融政策を加味すると、日米金利差が大きく縮小することは考えづらく、仮に日銀が再び介入したとしても円安の流れを変えるのは難しそうです。
ただ、地政学的リスクや経済のハードランディングなど、市場がパニック的に円売りを巻き戻す可能性も、少しずつ高まってきているようにも感じられます。
当面は、急な円高の可能性を内包しつつ、じわじわと円安が進むような展開といったところでしょうか。