相場のデータ・指標

【2023年6月】「WTI原油」のデータ分析(CFTC建玉明細(投機筋)、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API))

ここでは、直近の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポジション、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API)といった観点から見ていきたいと思います。

なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。

1.WTI原油とCFTC建玉明細(投機筋)

まず、CFTC建玉明細から投機筋のネットポジションの長期推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。

23年6月までのWTI原油価格と投機筋ネットポジションの長期推移を示した図

また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。

23年6月までのWTI原油価格と投機筋ネットポジションの直近の推移を示した図

投機筋のネットポジションとWTI原油先物価格の強い相関性は、コロナショック以降に弱まっていました。

ただ、ここ1年ほどは再び強い相関性を取り戻していることが見て取れます。

2.WTI原油とブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)

次に、市場が推測する期待インフレ率を示す指標である、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)についてです。

このBEIの推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。

23年6月までのWTI原油価格とブレーク・イーブン・インフレ率の推移を示した図

また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。

23年6月までのWTI原油価格とブレーク・イーブン・インフレ率の直近の推移を示した図

この図から、WTI原油先物価格とBEIとの間には、強い相関性があることが見て取れます。

直近では、BEIとWTI原油先物価格ともに低下傾向となっています。

3.WTI原油先物価格と原油在庫統計(EIA・API)

最後に、原油在庫統計についてです。

まず、米国エネルギー情報局(EIA)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)

23年6月までのWTI原油価格とEIAの原油在庫統計の推移を示した図

続いて、米国石油協会(API)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)

23年6月までのWTI原油価格とAPIの原油在庫統計の推移を示した図

これらの在庫統計を見ると、その増減はWTI原油先物価格の後追いとなっていることが分かります。

原油在庫の増減を見越して(先取りして)、原油価格が動いているのでしょう。

足元では、原油在庫がやや減少しており、WTI原油先物価格も堅調な値動きとなっています。

4.総括

WTI原油先物価格は、直近では70ドル前後での推移となっています。

原油価格は、コロナショック時の暴落後から上昇を続け、22年3月に130ドル超の天井を付けた後は、直近の60ドル台前半まで調整の値動きとなっていました。

とはいえ、2000年代前半までの40ドル前後が天井であった原油価格からすると、直近の70ドルという価格は決して割安な水準とは思えないという人が多いのではないかと思われます。

最近でこそ、逆戻りの動きがちらほら見られるようになってきましたが、石油をはじめとした化石燃料からダイベストメント(投資撤退)の動きが強まっていた昨今ではなおさらです。

実際、石油・ガス田開発への投資額は2014年のピークから、2020年時点で6割弱ほど減少しています。

一方で、新興国の人口増加や経済成長などにより、世界の石炭・石油・ガスを含むエネルギー消費量は今後ますます増加することが見込まれています。

さらに、太陽光・風力などの再生可能エネルギーがより広く普及するには、蓄電池の導入拡大や送電線の増強など、まだまだ大きな課題があります。

そして、小型原子炉や次世代エネルギー技術と言われる核融合発電の実用化への進捗も踏まえると、少なくとも2030年頃までは、化石燃料への需要は増加の一途をたどる可能性が高そうです。

そのような状況下で、石油の上流開発投資が絞られると、供給に支障を来す可能性すらあるでしょう。

以上のようなことから、中期的な目線では原油価格に強気であり、場合によって暴騰するケースすらあり得るのではないかと考えていますが、実際に私は、この数ヵ月で外国株を中心に石油・ガスの上流権益を持つ企業などを買い増しています。

投資に絶対がないのは言うまでもありませんが、中期的に大きなアップサイドを見込める、滅多にない機会ではないかと考えています。

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