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1.アパルーサ・マネジメント率いるデビッド・テッパー氏
今回は、デビッド・テッパー氏が率いる、アパルーサ・マネジメントの2022年6月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
デビッド・テッパー氏は、ヘッジファンド・マネージャーの運用報酬ランキングで、2009年、2012年、2013年にトップとなり、その後も、2016年3位、2017年5位、2018年3位と驚異的な成績を残しています。
特に2009年には、リーマンショック後に大きく売られた大手銀行株などを大量に取得し、辛抱強く持ち続けたことで、最終的に70億ドルもの利益を上げたと言われます。
また、2013年には、市場で不人気だった航空株への投資でリターンを出すなど、特定業種への集中投資で成果を出してきたことで知られています。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、デビッド・テッパー氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、22年8月中旬には、著名投資家たちの22年6月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.アパルーサ・マネジメントのポートフォリオ
それでは早速、アパルーサ・マネジメントの2022年6月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位17銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2022年3月末時点でのポートフォリオを示したのが下図になります。
この両者間の違いを際立たせるために、ポートフォリオ全体に対する影響度の大きかった銘柄を中心に見ていくことにしたいと思います。
4.デビッド・テッパーのポートフォリオ・マネジメントと総括
まず、22年4月から6月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する増加率が0.8%以上であった銘柄について見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 増加率(%) | 組入比率(%) |
CEG | Constellation Energy Corp | 9.71 | 9.71(新規買い) |
KSS | Kohl’s Corp | 2.63 | 4.20 |
CRM | Salesforce Inc | 2.07 | 2.07(新規買い) |
APTV | Aptiv PLC | 1.40 | 1.4(新規買い) |
META | Meta Platforms Inc | 1.11 | 10.12 |
次に、22年4月から22年6月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する減少率が1.5%以上であった銘柄についても見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 減少率(%) | 組入比率(%) |
MU | Micron Technology Inc | -4.76 | 2.00 |
OXY | Occidental Petroleum Corp | -4.46 | 3.23 |
PCG | PG&E Corp | -2.51 | 0.47 |
XLE | The Energy Select Sector SPDR Fund | -2.13 | 0(完全売却) |
GOOG | Alphabet Inc | -2.12 | 13.73 |
M | Macy’s Inc | -1.86 | 6.90 |
GT | Goodyear Tire & Rubber Co | -1.86 | 0(完全売却) |
MOS | The Mosaic Co | -1.56 | 0.74 |
XOP | SPDR Oil & Gas Exploration and Production ETF | -1.53 | 0(完全売却) |
まず何といっても、米大手クリーンエネルギー企業の「CEG(コンステレーション・エナジー)」をポートフォリオ全体の1割近くも新規買いしているのが目に付きます。
一方で、「OXY(オクシデンタル・ペトロリアム)」や「XLE(エネルギー・セレクト・セクター SPDRファンド)」、「XOP(SPDR S&P 石油・ガス探査・生産ETF)」、「EQT(EQT)」などのエネルギー関連を大きく売っています。
なお、22年1月から3月末までの間に新規買いしていた統合型リゾート運営の「LVS(ラスベガス・サンズ)」や「WYNN(ウィン・リゾーツ)」は完全売却となっていました。
また、同期間に大きく買い増していたライドシェアリングの「UBER(ウーバー・テクノロジーズ)」に関しても、保有株の半分ほどを売却していました。
そして、6月末時点から直近までにポートフォリオの内容に変更がなかったと仮定すると、アパルーサ・マネジメントのパフォーマンスは、7月末よりS&P 500をアウトパフォームした状態で推移しています。
ちょうど7月末より、「CEG(コンステレーション・エナジー)」の株価が急騰しており、直近に至るまで高値圏で推移していますが、他の銘柄も見た限り、ほぼこの「CEG」一銘柄が寄与していたと言えます。
22年6月末時点で、アパルーサ・マネジメントの保有銘柄数はわずか30銘柄に過ぎませんが、その中で1割近くも新規買いした銘柄がポートフォリオのパフォーマンス向上に大きく寄与するというのは、まさに神業としか言いようがありません。
デビッド・テッパーのポートフォリオ・マネジメントには引き続き、注目していきたいところです。