ここでは、直近の「WTI原油」について、CFTC建玉明細の投機筋ポジション、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)、原油在庫統計(EIA・API)といった観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照ください。
1.WTI原油とCFTC建玉明細(投機筋)
まず、CFTC建玉明細から投機筋のネットポジションの長期推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
この図から、投機筋のネットポジションとWTI原油先物価格は、強い相関性を認めていることが分かります。
ただ直近では、投機筋のネットポジションとWTI原油先物価格との乖離が拡大しています。
2.WTI原油とブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)
次に、市場が推測する期待インフレ率を示す指標である、ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)についてです。
このBEIの推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。
また、この図から直近の推移だけを取り出して示したのが、以下の図です。
この図から、WTI原油先物価格とBEIとの間にも、強い相関性があることが見て取れます。
そして、直近ではBEIとWTI原油先物価格ともに、ほぼ横ばいでの推移となっています。
3.WTI原油先物価格と原油在庫統計(EIA・API)
最後に、原油在庫統計についてです。
まず、米国エネルギー情報局(EIA)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図になります。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
続いて、米国石油協会(API)の原油在庫統計の推移を、WTI原油先物価格とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、右軸の原油在庫統計のスケールは反転しています。)
これらの在庫統計を見ると、その増減はWTI原油先物価格の後追いとなっていることが分かります。
ただ足元では、原油在庫が、WTI原油先物価格との乖離を埋めるようにして、急減少しています。
4.総括
WTI原油先物価格は、8月中旬に62ドル前後にまで下落する局面もありましたが、直近では70ドル超にまで戻し、高値圏での推移となっています。
堅調に推移している背景には、米国とイランの対立による中東情勢の不安定化や、それに伴う供給への懸念があると思われます。
一方で、コロナウイルスの感染拡大や、中国経済の減速懸念などから、国際エネルギー機関(IEA)が21年後半の石油需要を下方修正したことは、原油相場にとっては逆風となります。
そして、今後コロナウイルスの感染拡大がピークアウトしたり、投機筋が買い越しを続けたりするようだと、原油価格の一段高もあり得ます。
そうなると、物価の上昇にもつながり、ひいてはFRB(連邦準備制度理事会)の金融政策にも影響を及ぼしてくることが考えられます。
そういった意味でも、原油相場の先行きについて注視しておく必要がありそうです。