1.農作物ETFの長期推移
前回の記事では、信託報酬控除後の農作物10種加重平均価格から、「疑似DBA」なるものを算出し、その長期推移を示しました。
下図は、それを再掲したものになります。
2.農作物価格と株価指数・長期金利との比較
さて、ここでは、農作物ETFの推移を、米国の代表的な株価指数であるS&P500および、米長期金利(米10年国債利回り)と比較していきたいと思います。
なお、農作物ETF価格に関しては見やすくするために、上記の「疑似DBA」の価格を何倍かしたものを使用しています。
また、米長期金利は、債券価格の動きを反映させる目的で、軸を反転しています。(長期金利と10年国債価格は逆相関の関係にあるため。)
以下の図は、1959年7月以降の、農作物価格(冒頭の「疑似DBA」価格を10倍)、S&P500、米長期金利(軸反転)の推移を示したものです。
この図の全期間で見ると、農作物価格と米長期金利との相関係数はマイナス0.09、S&P500との相関係数は0.25と、ともに相関が低いことが分かります。
3.農作物価格の上昇局面
次に、上図でS&P500が大きく上昇し始める1995年7月頃を境に、その前と後に分けて、農作物価格とS&P500、米長期金利の推移を見ていきます。
まず、1995年7月までの推移を示したのが次の図です。(農作物価格については冒頭の「疑似DBA」価格を2倍、米長期金利については軸反転。)
次に、1995年7月以降の推移を示したのが以下の図になります。(農作物価格については冒頭の「疑似DBA」価格を10倍、米長期金利については軸反転。)
これらの図から、特筆すべきは何といっても、1970年代になるでしょう。
というのも、この時期は、S&P500も米10年国債価格もさえない値動きとなっている一方で、農作物価格は大きく値上がりしていたためです。
この背景には、世界的な景気の過熱や農作物不作がありました。
また、2000年代後半にも農作物価格が大きく上昇していますが、これには、2006年の豪州大干ばつ、2007年の欧州天候不調・豪州干ばつなどが関係していました。
4.ポートフォリオに商品を加える
ここまで見てきたように、農作物価格は、S&P500や米長期金利との相関が低く、ポートフォリオに組み込む価値があると言えそうです。
最後に、インフレヘッジとして用いられる代表的な資産の一つである金(gold)価格の推移も併せて示したのが、以下の図です。
この図の期間において、農作物価格と金価格の相関係数を調べると、0.56と割と強い相関を認めています。
そうなると例えば、ポートフォリオに占める、農作物と金の割合を10%ずつで計20%とするよりは、7.5%ずつで計15%とする方が、効率が良いように思われます。
さて近年では、先進各国での大規模な財政政策や金融政策による景気刺激が、インフレを招くことが懸念されています。
実際、一部の農作物は既に値上がりしつつあります。
また、先進各国の金融政策は少なくとも当面は継続される見込みであり、そこに天候不順や不作、景気過熱による需要増などが重なれば、農作物の価格が急騰する可能性もあります。
そういったことから、この先は農作物にも投資しておくことが、ポートフォリオの堅牢性を高めることにつながってくるのではないかと考えています。