1.台湾と中華民国と中華人民共和国
最近、台湾を巡る米中の攻防が激しくなってきていると報じられますが、この台湾という国には少し分かりづらいところがあります。
そこで、まずは台湾という国について簡単に解説していきたいと思います。
台湾は、第二次世界大戦までは日本(大日本帝国)の領土でしたが、敗戦により、台湾は中華民国(中国国民党)の施政下となります。
その後、中国共産党と中国国民党による内戦が起き、中国国民党は中国の領土を中国共産党に奪われ、台湾へと追いやられます。
つまり、現在も台湾を実効支配しているのは中華民国ということになります。
なお、現在では中華民国は民主化しており、中国国民党は最大野党となっています。(与党は民主進歩党。)
一方で、中国共産党が支配する中華人民共和国は、中華民国の存在を認めておらず、一つの中国方針に基づき、台湾が中華人民共和国の統治権下の台湾省になることを求めているのです。
ただ、台湾では民主化以降、台湾と中華人民共和国は別々の国であり、台湾は事実上の独立国であると考える人の割合が多くなっており、現総統の蔡英文もその一人となっています。
2.台湾企業の次世代半導体技術
さて、ここからは台湾の経済に関してです。
1990年代から、鴻海精密工業などの台湾企業は、中国に進出し、連携を深めていました。
しかし、2016年1月の総統選で蔡英文が当選を果たしてからは、対中強硬路線となっています。
また、米国も中国による武力統一を警戒して、台湾への武器売却を積極化しています。
その背景には、昨年や今年に入ってからも、中国軍の戦闘機が台湾の防空識別圏に侵入したりしていることがあります。
このように、米中が台湾を巡る攻防を繰り広げているのは、台湾にはTSMCのような次世代半導体技術の核心を握る企業が集積しており、米中の技術覇権争いに直結してくるためなのです。
そのため、今後も台湾を巡って米中のハイテク摩擦が激化していくことは避けられないでしょう。
3.中国のレアアース供給網
今のところ、TSMCは中国ファーウェイなどとの取引を停止しており、2020年5月には米国アリゾナ州に工場を新設するとも発表していました。
また、TSMCは日本国内にも開発拠点を設置すると見られています。
こういった動きに対して、中国が台湾などへのさらなる軍事的行動に打って出て可能性もあります。
ただ、他にも懸念されるのが、中国によるレアアース(希土類)の輸出で、レアアースは、EV(電気自動車)や風力発電機の風車などで、高性能磁石やモーターの材料として不可欠なものです。
中国は、世界のレアアース生産の6割強、精製工程の7~8割をも担っていることから、中国以外から代替品を調達するのは容易ではなく、調達できたとしても大幅な価格の上昇が避けられません。
そして、中国は最近になって、レアアースの統制を強化しており、今後レアアースの禁輸措置を取る可能性も否定できないのです。
そうなると、レアアースの価格高騰は避けられないでしょう。
4.レアアースへの投資
とはいえ、レアアースには、金や銀などのように直接投資することができません。
そこで、代わる手段としては、米国、中国、オーストラリアの鉱山会社など、レアアース関連銘柄で構成される「REMX」というETFへの投資が挙げられます。
下図は、その「REMX」の設定来の推移を示したものです。
既に3月の安値24ドルからは3倍ほどに値上がりしており、2018年初頭の高値87ドル超に迫る勢いとなっていますが、2011年4月の高値269ドルに比べればまだ上昇余地があると言えます。
米中のハイテク摩擦がエスカレートし、レアアースを使わない技術や、レアアースの代替素材などでも開発されない限りは、レアアースの価格高騰が続くことになりそうです。