1.本書の概要
ここでは、以下の書籍についてのレビューの後半を書いていきたいと思います。
- ウォール街で勝つ法則 - 株式投資で最高の収益を上げるために
- 著者:ジェームズ・P・オショーネシー
- 出版日:2001/12/21
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、個別株、投資戦略
まずは、本書の概要からです。
本書では、PERやPBR、利益成長率、ROEなどといった指標、およびその組み合わせについて、45年間という長期間にわたる検証を行った結果が書かれています。
それらを単一の指標における検証結果と、複数の指標を組み合わせた場合の検証結果とに分け、前者については前回に以下の記事で書きました。
そして、ここでは後者の方について書いていくことにします。
なお、本書の章立ては、次のようになっています。
- 第1章:株式投資戦略―手法はさまざまでもゴールは同じ
- 第2章:頼りにならない専門家―優れたパフォーマンス達成への障害
- 第3章:ゲームの規則
- 第4章:時価総額によるランク付け―企業規模の問題
- 第5章:PER(株価収益率)―勝者と敗者を分けるカギ
- 第6章:PBR(株価純資産倍率)―株価評価の優れた尺度
- 第7章:PCFR(株価キャッシュフロー倍率)―キャッシュで株価を評価する
- 第8章:PSR(株価売上倍率)―割安株指標の王様
- 第9章:配当利回り―配当収入を狙う
- 第10章:割安株指標の価値〔ほか〕
- 第11章:EPSの年間変化率―利益成長率と高パフォーマンスは連動するか
- 第12章:5年間におけるEPS変化率
- 第13章:利益率―投資家は企業収益から利益を得られるか
- 第14章:ROE(株主資本利益率)
- 第15章:RPS(レラティブ・プライス・ストレングス)―勝者は勝ち続ける
- 第16章:複数の指標を併用してパフォーマンスを高める
- 第17章:2つの指標に基づく全銘柄のためのバリューモデル
- 第18章:主力銘柄のなかからバリュー株を探し出す―基本のバリュー投資戦略
- 第19章:基本のグロース投資戦略を探し求めて
- 第20章:戦略を組み合わせてリスク調整済みパフォーマンスを最大化する
- 第21章:投資戦略をランクづけする
- 第22章:株式投資から最大の利益を得るには
2.低PSR・高RPS
第16章では、複数の指標を併用した比較的シンプルな投資戦略の検証結果について書かれています。
それによると、低PERなどのバリュー指標に、レラティブ・ストレングスを組み合わせると、パフォーマンスが高まる可能性が高いとのことです。
特に、低PSRと高レラティブ・ストレングスを併用すれば、見事なパフォーマンスを上げられると言います。
これは具体的には、全銘柄グループからPSRが1倍以下のものを選び、さらに年間株価上昇率上位50銘柄を購入するという投資戦略になります。
一方で、グロース指標に関しては、レラティブ・ストレングスと併用しない方がよいものがあるものの、次のような指標では役に立つと述べられています。
- EPSの年間変化率(25%超)
- ROE(15%超)
3.全ての中で最高の投資戦略
本書では、上記の「低PSR、高レラティブ・ストレングス」よりも、さらにリスク調整済みリターンの高い投資戦略の追求がなされています。
第20章では、リスク調整済みリターンを高める上で、最も効率の良い手法は、グロース投資戦略とバリュー投資戦略を組み合わせたものだと書かれています。
これにより、グロース戦略に特有のボラティリティを大幅に抑えながらも、ボラティリティの低いバリュー戦略によって得られる潜在的なキャピタルゲインを高められるというのです。
そして、第21章では、「基本のバリュー投資戦略」と「基本のグロース投資戦略」を組み合わせた「統合投資戦略」が最高の投資戦略であったと結論付けられています。
これは、2つの投資戦略のバランスが常に50%ずつになるように毎年ポートフォリオの見直しを行うというものです。
また、この統合投資戦略で用いられる、「基本のバリュー投資戦略」と「基本のグロース投資戦略」については、それぞれ第18章と第19章で説明されています。
4.基本のバリュー投資戦略
まず、「基本のバリュー投資戦略」とは、高配当利回りの主力銘柄50銘柄を購入するというものです。
ここで、主力銘柄というのは、以下の条件を満たすものを指します。
- 時価総額および発行済み株式数が平均を超えている。
- 1株当たりキャッシュフローが平均よりも潤沢である。
- 売上高が平均的な企業の1.5倍はある。
- 公益事業株ではない。
なお、最後の公益事業株を除くのは、公益事業株を含めるとポートフォリオを独占してしまう恐れがあるためです。
そして、この基本のバリュー投資戦略は、リスク調整済みリターンが傑出しており、S&P500指数などに連動する運用よりも、この投資戦略の方をお勧めするとも書かれています。
5.基本のグロース投資戦略
続いて、「基本のグロース投資戦略」とは、以下の条件を満たすものの中から、年間株価上昇率(レラティブ・ストレングス)上位50銘柄を購入するというものです。
- 全銘柄グループから抽出する。
- 利益が前年を上回る
- PSRが1.5倍未満である。
このようなグロース投資戦略では、大型株よりも全銘柄から選択した方がはるかに良い結果が得られると言います。
それは、グロース株は設立後、日が浅い小企業が多く、大型株グループに含まれていないものが多いためです。
また、このグロース投資戦略に、通常はバリュー指標とされるPSRが用いられていることからも分かるように、グロース株を買うのに最も良いタイミングは割安になっているときであるとも述べられています。
6.総括
第21章では、投資戦略のランク付けが行われており、パフォーマンスが上位5位の投資戦略ではいずれも、レラティブ・ストレングスの基準を採用していたとあります。
一方で、パフォーマンスが下位5位の投資戦略は、PERやPBR、PSR、PCFRが異常に高い数値のものが含まれていたとのことです。
これらのことから、レラティブ・ストレングスが高く、株価が適正価格の銘柄に投資することで、高いパフォーマンスを上げることができるだろうと言えます。
実際に、「低PSR、高レラティブ・ストレングス」の投資戦略や、「統合投資戦略」も、それに準じたものとなっています。
さらに、パフォーマンスが最低であったのは、年間株価上昇率下位50銘柄に投資する戦略であったとも書かれています。
つまり、前年の値下がり率が大きい銘柄は避けるべきだということです。
これは、大きく値下がりしている銘柄を逆張りで購入していきがちな個人投資家にとって、示唆に富む結果だと言えるのではないでしょうか。
そして、最後の第22章には、「長期にわたるデータによると、投資戦略の有効性を判断するには最低でも25年が必要なことが証明されている」とあります。
長年にわたる有効性が実証されていない投資戦略では、優れたパフォーマンスを示すものであっても、より長期では逆の結果になってしまうといったことが起こり得るのです。
ですから、本書のように45年間という長期にわたって、なおかつ投資指標について包括的に検証された内容というのは、非常に貴重なものだと言えます。