1.本書の概要
ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。
- 最後の10倍株を買いなさい!
- 著者:菅下 清廣
- 出版日:2019/6/29
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:経済、株式投資、個別株
まずは、本書の概要からです。
本書では、「経済の千里眼」こと菅下清廣氏によって、これからの知財資本主義についてや、その時代の有望株などについて書かれています。
なお、本書の章立ては、以下のようになっています。
- 第1章 アメリカ発のバブルはこれからが本番
- 第2章 波動で見ると2020年までにバブルのピークが来る
- 第3章 令和の時代に投資はどこへ向かうか
- 第4章 政治の流れから経済を読む
- 第5章 知財資本主義で資産を10倍にする投資
- 第6章 日本の未来を拓く12人の起業家
- 第7章 新成長企業ベストイレブン
- 第8章 新々IPO銘柄ベストイレブン
2.3つの長期サイクル
第2章では、相場の波動について書かれています。
波動には、時間の波動と価格の波動があり、時間の波動については、長期サイクルが重要だとして、以下の3つが挙げられています。
- 2年半~3年:キチン・サイクル
- 7年~10年:ジュグラー・サイクル
- 20年:クズネッツ・サイクル
そして、こうしたサイクルを基に、次のような予測もされています。
- 2020年の12月から2021年の12月の間にトランプ相場が上昇第2波の天井を打つと予想できる。
- トランプ相場の天井はおそらく3万5000ドルから4万ドルぐらいの間だと予想します。
- 2021年の後半から2022年の後半にかけて、世界的な不況期がやってくると思う。だからいまからの買いは2020年の11月まで。ここが株式投資の最後のチャンスです。
3.為替は円安ドル高基調になる?
また、為替については、2019年は常に円高リスクがあり、瞬間的に99円や100円があるかもしれないが、それが最後の円高で、為替は円安ドル高基調になる、と言及されています。
その理由として、2つのものを挙げています。
1つ目は、日本の貿易収支は1~2兆円の黒字に対し、資本収支は20兆円の黒字であるため、円高になったら機関投資家を中心に大量の円売りのドル買いが生じ、円安ドル高基調になるというものです。
まず、国際収支統計は2014年1月より見直されており、「資本収支」は「その他資本収支」が除外され「外貨準備」が加わった、「金融収支」となっています。
また、対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示す「第一次所得収支」が、2018年は20.9兆円となっています(金融収支は20.0兆円)。
ただ、これはドルなどの外貨で生じるため、円に戻すとなると円高要因です。
一方で、直接投資が14.7兆円もあるため、そのほとんどは円に戻されず、直接海外での投資に使われていると考えられ、大した円高要因とはならないでしょう。
そもそも、外国為替市場において、ドル円を含む米ドルは、1日当たり130兆円以上もの取引額があります。1年ではなく、1日当たりです。
それを考えると、日本の国際収支統計が、ドル円相場に及ぼす影響というのはたかが知れているでしょう。
次に2つ目の理由として、ウォール街で相場予測的中率が高いと評判のジェフリー・ガンドラック氏が、2021年に米国金利が4%になると予測していることを挙げています。
これに関しても、確かに米国金利は上昇しているかもしれませんが、米国金利が上昇したら円安ドル高になると考えるのは早計です。
この金利が、短期金利と長期金利のどちらを指しているのか分かりませんが、仮に長期金利のことを指しているとします。
長期金利の決定要因には、期待経済成長率や期待インフレ率の他に、リスクプレミアムもあります。
つまり、米政府債務残高の増加により、信用リスクが意識されると、逆に円高ドル安となることも考えられるのです。
もっとも、その場合の長期金利上昇は4%程度では済まないかもしれませんが、世界的な金融緩和による超低金利の環境下では、全くないとも言い切れません。
4.知財資本主義の時代
第3章では、以下の3つの技術革新が21世紀の世界を変えると書かれています。
- AI
- バイオ
- ブロックチェーン(仮想通貨も含む)
具体的には、GAFAを中心に世界のユニコーン企業に投資する、または日本のユニコーン(時価総額1000億円以上の企業のこと)に投資するのが、一番シンプルで確実な投資法になると言います。
その目利きに自信がなければ、孫正義氏を真似すれば良いともあります。
というのも孫氏は、AIを活用する1000億円企業に重点的に投資しているからです。
そして、将来のユニコーン企業を見つける上でヒントになるのは、「無から有を生む」ビジネスかどうかだとのことで、以下の5つの企業についてそれぞれ解説がなされています。
- ウーバー・テクノロジーズ
- ウィーワーク
- GA technologies(3491)
- フィル・カンパニー(3267)
- ジャパンベストレスキューシステム(2453)
さらに、このような新しいアイデアでニュービジネスを生み出している企業が、日本でも新規IPO銘柄の中から何社も出てくるだろうと言い、次のように書かれています。
知財資本主義相場はこれからが本番です。それを2020年までに仕込めばスーパーリッチになれる。
おそらく最近上場の新々IPO銘柄で時価総額が500億円以下くらいの株から10倍株が出てくるでしょう。
最近のIPO銘柄にシフトするのが、これからの投資戦略の柱になる。
なお、第7章では、新成長企業ベストイレブンとして、以下の銘柄が挙げられています。
- ベネフィット・ワン
- ジャパンベストレスキューシステム
- ユーグレナ
- オークファン
- エルテス
- ベクトル
- レアジョブ
- GAtechonologies
- Ubicomホールディングス
- ピアラ
- ZUU
また、第8章では、新々IPO銘柄ベストイレブンとして、以下の銘柄が挙げられています。
- サーバーワークス
- カオナビ
- トビラシステムズ
- 自立制御システム研究所
- チームスピリット
- リックソフト
- Kudan
- バルテス
- 識学
- ハウテレビジョン
- グッドスピード
5.総括
本書で挙げられていた、有望な企業については、一通り決算情報や株価を調べてみました。
その中には、確かに有望と思われるような企業がいくつもありました。
ただ、すでに株価が大きく下落していたり、グッドスピードやピアラのように果たして本当に、今後の大きな成長が期待できるのだろうかと思うような企業もありました。
こういった新興企業への投資はなかなか難しいものがあると感じますが、モメンタム(株価の勢い)や出来高を重視し、損切りをしっかり行うことが大事になってくるでしょう。
いわゆる一般的なバリュー投資とは、全く異なったアプローチをする必要があるのです。
そして、本書は成長株投資やモメンタム投資を実践されている方にとっては、その対象となる企業を見出すのに有用な内容ではないかと思われました。