1.本書の概要
ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。
- 株、FX、世界経済がマンガでわかる!新女子高生株塾
- 著者:ホイチョイ・プロダクションズ
- 出版日:2011/9/29
- お役立ち度 :
- 難易度 :
- マニアック度:
- 分類:株式投資、FX
まずは、本書の概要からです。
本書は前回、以下の記事でレビューした『マンガでわかる株式投資! 女子高生株塾』の続編に当たるものです。
本書では、株式だけでなく、FXや金(Gold)などについても触れられており、行動経済学や決算書の読み方といった、前作から一歩踏み込んだ内容についても書かれています。
なお、本書の章立ては、以下のようになっています。
- Vol.1:FXで儲かる仕組み
- Vol.2:日経平均とデフレの関係
- Vol.3:行動経済学を学ぶ
- Vol.4:経済学と投資の関係
- Vol.5:キャバクラで学ぶ経済学
- Vol.6:決算短信のカンタンな読み方
- Vol.7:配当利回りに着目した投資
- Vol.8:短期トレードは仕手に乗れ
- Vol.9:出来高乖離率に注目せよ
- Vol.10:ストップ安と全株一致
- Vol.11:整理銘柄と監理銘柄
- Vol.12:ブラジル高成長の秘密
- Vol.13:史上最高値を記録した金価格
- Vol.14:中国と豪ドルの密接な関係
- Vol.15:人民元と中国経済
- Vol.16:中国の統計発表の裏側
- Vol.17:日本は社会主義国か?
- Vol.18:予想値と発表値の関係
- Vol.19:パッシブ運用とインデックスファンド
- Vol.20:量的緩和と円安
2.行動経済学
Vol.3では、行動経済学について書かれています。
行動経済学については、人間は理論や方程式では説明がつかない「みんながやるヘンなこと」をやる生き物で、そういった人間が犯す勘違い(認知心理学)を経済学に持ち込んだ学問であると説明されています。
その例としては、人間は限りなく0に近い確率は過大評価し、10~20%前後の確率は過小評価する傾向がある、という『プロスペクト理論』が挙げられています。
これは例えば、総売上げの54%を地方自治体が持っていってしまう、きわめて返金率の低いギャンブルである「宝くじ」が根強い人気を持っているということです。
また、10~20%と高い確率で起こる「ガン」を軽視し、平気でタバコを吸うことなどです。
他にもVol.4では、同じくプロスペクト理論で説明される、次のような特性について説明されています。
人間は、『利得領域』つまり、儲かっている範囲内では、リスク回避のために安全策をとりたがるが、『損失領域』つまり損してる限りは、損を取り戻すためにギャンブルをしたがる生き物だ。
そのため、株式投資においては、利益が出ているときにはすぐに『利食い』する一方で、損しているときにはなかなか『損切り』ができず、いわゆる塩漬け株となって損失を拡大してしまう傾向があるのです。
3.決算短信の簡単な読み方
Vol.6では、決算短信の簡単な読み方について書かれています。
まず、決算短信は一般に、財務三表と経営者の『作文』、データの抜粋が載っている、いわゆる『表紙』からなります。
このうち、経営者の『作文』というのは、赤字の「言い訳」、または黒字の「自慢」のことだと言っています。
そして、決算短信で投資家が見なければならないのは『表紙』だけであり、株価を左右する情報はすべてこの『表紙』に詰まっていると説明されています。
その『表紙』の中でも最も注目すべきなのは、一番下にある今期の業績予想です。
また、この業績予想は前の期の業績と比較して見る必要があり、投資において重要なのは、現在の状態よりも、現在から未来にかけての『変化率』なのです。
さらに、業績予想を見るときにもう一つ重要なポイントは、会社四季報やアイフィス(IFIS)の出した数字と比べてみることだと言います。
それは、こうした金融情報の専門企業が発表する業績予想や、各証券会社の予想数値が市場全体のコンセンサス(みんなの合意)となるからです。
その『市場コンセンサス』と、実際に企業自身が発表した業績予想の間にズレがあった場合に、株価は大きく動くものなのです。
4.『ダウの犬』戦略
Vol.7では、配当利回りに着目した投資戦略である、『ダウの犬』について触れられています。
これはダウ平均を構成する30銘柄のうち、最も配当利回りの高い5銘柄を買い、1年ごとに一番数字が落ちた1銘柄を入れ替える、というものです。
アメリカのマイケル・オヒギンズというファンド・マネジャーが、この戦略で長年トップの成績を収め続けたそうですが、彼が明かすまで誰もその方法に気づかなかったと言います。
日本にも東証が選んだTOPIXコア30という指数がありますが、このTOPIXコア30で『ダウの犬』と同じ方法で取引をしたとすると、過去10年間で良い結果が得られたと書かれています。
また、配当目的で長期投資をするなら、景気敏感株よりもディフェンシブ株が狙い目だと言います。
というのも、ディフェンシブ株は、景気に関係なく需要が安定しているため、安定的に配当を得られたり、株価の変動も小さい傾向にあるためです。
なお、景気敏感株やディフェンシブ株などについては、以下のような業種が例示されています。
- 景気敏感株:パルプ・鉄鋼・化学などの原材料系や機械系。
- ディフェンシブ株:電力・ガス・電鉄・通信や、食品・医薬品。
- 景気敏感株とディフェンシブ株の中間:金融系、内需インフラ系(不動産・建設・トラック輸送)、消費サービス系
5.総括
本書は、株式投資に関する基本的な事柄について書かれた、『マンガでわかる株式投資! 女子高生株塾』の続編ということもあって、ややマニアックな内容が多かったように思います。
特に、株式投資に限って言えば、本書をわざわざ読まなくても、ここで書いた内容だけを押さえておけば十分なように思われます。
前作と同様、ストーリー展開は面白いのですが、漫画とはいえページ数や文字数も多く、読み終えるのにそれなりの時間もかかるため、興味本位で読むというのでなければ、他の書籍を読まれた方が良いでしょう。