読書録・書評

【読書録・書評】『インベスターZ』(全21巻)の第7~15巻のレビュー

ここでは、『インベスターZ』という漫画(全21巻)について、以下の7~15巻のレビューを書いていきたいと思います。

インベスターZ(7) (モーニング KC)インベスターZ(8) (モーニング KC)インベスターZ(9) (モーニング KC)インベスターZ(10) (モーニング KC)インベスターZ(11)インベスターZ(12) (モーニング KC)インベスターZ(13)インベスターZ(14)インベスターZ(15)

1.漫画の概要

まずは、漫画の概要からです。

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  • 分類:株式投資、個別株、漫画

『インベスターZ』は、『ドラゴン桜』という漫画でブレイクした三田紀房氏による、投資をテーマにした漫画です。

ここでは、漫画のあらすじやストーリーについては触れずに、投資に関係する部分だけを一部抜粋しながら、レビューしていきたいと思います。

2.巨人の肩の上に乗る

第7巻では、アイザック・ニュートンの「私がより遠くまで見渡せるとすれば、それは巨人の肩の上に乗っているからです」という言葉が引用されています。

また、いくら天才といえどもいきなり革新的なアイデアを出せるわけではなく、先行研究や先人の教えを土台として学んでから自分の個性を発揮することが成功の鍵になる、とも書かれています。

そして、ここでは世界的に著名な投資家である、ウォーレン・バフェットの肩に乗るということで、その金言も紹介されています。

それは例えば、次のようなものです。

いい銘柄を見つけて、いいタイミングで買い、いい会社である限りそれを持ち続ければいい。

並外れたことをしなくても、並外れた業績を達成することはできる。

時代遅れになるような原則は原則ではない。

第7巻では他にも、企業について知りたかったら、社是を読んでみようといったことが書かれています。

これは、新約聖書の一節に「はじめに言葉ありき」とあるように、「成功する会社は細部にまで気を配りながら経営しているから、社是の一つをとっても安易に妥協はせずに、徹底的にこだわって作っているに違いない」という観点からのものです。

3.戦争は買い

第8巻では、太平洋戦争中の株式投資などについての内容となっています。

株式市場は、長崎に原爆が投下された1945年8月9日まで、ほとんど1日も休むことなく普通に開いていたといい、その間の株価推移として以下のような図が載せられています。

太平洋戦争中の株価推移

戦時中、商業やサービス業、消費財産業などは縮小を余儀なくされたのに対し、鉄鋼や造船といった軍需産業は大いに活況を呈し、全体の株価を支えたとのことです。

また、以下のようなことも書かれています。

1937年に南京が陥落したときは、提灯行列まで繰り出し、相場も沸いた。

1941年12月8日の真珠湾攻撃から数日間は相次ぐ大戦果で市場は大盛況! 出来高は連日100万株を突破する「大商い」となり、4日後の12日に政府が株購入の自粛要請を出す高騰ぶりだった。

そして、1942年に一転して戦局が悪化し敗色濃厚だったにもかかわらず、株価が上がり続けていた背景には、国家総動員法などに基づく、政府の市場介入があったとのことです。

各証券会社に、「株価を下げることをするやつは国賊」という脅しをかけてまで、政府は株価維持に躍起になっていたというのです。

ちなみに、「戦争は買い」と言われるように、日清戦争(1894~)や日露戦争(1904~)、第一次世界大戦(1914~)の際にも、戦勝によって株価が上昇し、やがて急落したということや、以下のようなことについても触れられています。

資産家は恐慌時に生まれる。投資において戦争は好機。大暴落後の恐慌時は株価が実体価値よりも値下がりする。このときこそ株で儲けを得る絶好の機会だ。

例えば、米国ケネディ財閥のジョセフ・P・ケネディや石油王と呼ばれるジャン・ポール・ゲティは、世界恐慌時に底値で買った株を高値で売り抜け、財閥を築き上げている。

日本でも、三菱、住友、三井、安田などは、明治・大正の不況で大きく値下がりした株を買い集め、経営権を握ることで、財閥の地位を盤石なものにしていった。

4.会社四季報の活用

第9巻は、ベンチャー事業の心構えや、就職活動に関する内容。

第10・11巻は、主にFX(Foreign Exchange:外国為替証拠金取引)についての内容で、円安・円高など基本的なことが書かれています。

第12巻は、主に会社四季報に関する話で、「リコー」のルーツが「理化学研究所」であったり、「キリン」は三菱財閥がつくった「麒麟麦酒」が母体であったりといったことが書かれています。

他にも、「シマノ」の自転車部品や、「オルファ」のカッター、「YKK」のファスナー、「マキタ」の電動工具、「日本電産」の精密小型モーター、「白鳳堂」の化粧筆、「ミクロ発條」のボールペン用精密バネなど、世界シェアの高い自社製品をもつ企業も紹介されています。

5.分散投資と集中投資、企業研究

第13巻では、分散投資と集中投資の優劣に関して、アメリカの著名投資家であるピーター・リンチの次のような言葉が取り上げられています。

株を保有するのは子どもを持つようなもの。目が届かなくなるほどたくさん抱えてはいけない。保有するのはせいぜい5銘柄。

企業を研究することなく株に投資すれば、手札を見ずにポーカーをするときと同程度の成功しか得られない。

また、企業研究の基本的なことについても触れられており、企業の財務については以下のようなことが書かれています。

営業利益と経常利益の数字が2つとも伸びていて、かつその成長率が鈍化せずに加速している企業を選ぶことが一番! 

決算を見るべき年数はとりあえず2年。2年分の四半期決算でまず判断すればいい。

6.タワーマンションの資産価値

第14・15巻は主に不動産投資についての内容となっています。

第14巻では、不動産屋の営業マンが、「タワーマンション高層階の部屋は、世の中で絶対に劣化しない資産価値」だと言うシーンがあります。

実際に世間一般でもそういった風潮がありますが、タワーマンションの特に高層階の資産価値というのは、今後低下していくのではないかと個人的には思っています。

というのも、タワーマンションは高層にするために軽量素材を外壁に使っていることなどから、経年劣化による雨漏りが起きやすかったり、修繕費用にもかなりのコストがかかるためです。

また、特に高層階では、窓も開けられないほどの強風、地震時の長時間にわたる大きな揺れ、エレベーターの待ち時間が長い、などのデメリットもあります。

ですから、タワーマンションの高層階というのは、住環境としては決して褒められたものではなく、節税目的で買うものに過ぎないのではないかという認識です。

ただ、2018年度の税制改正で高層階の節税効果がやや減少したように、今後の税制改正によって、タワマン節税への締め付けがより一層厳しくなる可能性は無きにしもあらずでしょう。

7.不動産の値引き交渉

さて、第14巻では、「不動産は売り出し価格のまま買っちゃダメ」という話も出てきます。

というのも、「新築マンションでも建て売り住宅でも、値引きを前提に価格設定している」からであり、次のように書かれています。

例えば、分譲マンションの場合、売値から仕入れ値を引くと、20%残るのが相場。そこから10%の広告費を引いて10%が利益というビジネスモデル。

粘って交渉していくと、最終的には7%引きくらいまでもっていくことができる。

売り出し価格と成約価格の間には、平均5%から7%の差があることからもわかるように、その程度の値引きは現実的なんです。

ですから、「不動産を購入するときは、必ず値引き交渉をしてみること」というのは大いに参考になります。

 

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