ここでは、直近の「ドル円相場」について、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から見ていきたいと思います。
なお、各指標に関しては、以下の記事でそれぞれ詳しく解説していますので、よろしければご参照下さい。
1.日米10年国債利回りとドル円相場
まずは、米国の10年債利回りとドル円相場の推移を比較してみます。
次に、米国と日本の10年国債利回りの差をドル円相場の推移と比較したのが以下の図です。
これらの図から、ドル円相場の動きは、日米の10年国債利回り差の推移と概ね歩調を合わせているように見えます。
一方、上の図ではドル円相場の動きと、米10年国債利回りの推移とに直近で乖離が生じており、円高余地があるように見えます。
2.購買力平価とドル円相場
次に、日米の購買力平価とドル円相場の推移を比較してみます。
なお、購買力平価(PPP)に関しては、日米の相対的購買力平価である、消費者物価PPP、企業物価PPP、輸出物価PPPを用いています。
この図からは、ドル円のレートは、企業物価PPPを上限、輸出物価PPPを下限として推移していた時期が長く、そう考えると、購買力平価に関しても円高余地の方が大きいように思われます。
3.修正ソロスチャートとドル円相場
最後に、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)とドル円相場の推移を見ていきます。
この図からは、ドル円相場と修正マネタリーベース比率の推移との乖離は縮小傾向であるものの、ドル円のレートにはやや円高余地があるように思われます。
4.総括
ここでは、日米10年国債利回り、購買力平価、修正ソロスチャート(修正マネタリーベース比率)という3つの観点から、ドル円相場について見てきましたが、その全てで円高余地があるように見えました。
そして、今後のドル円相場を占う上では、やはり日米の金融政策や長期金利が鍵になってくるでしょう。
ここで、最近数か月の日本と米国の10年国債利回りを振り返ってみると、それぞれ一時0.15%、3.2%を超えていたものが、直近ではそれぞれ、0.04%、2.9%前後となっています。
この長期金利の動きは、米中貿易摩擦の激化による、世界的な景気減速が懸念されてのものだと思われます。
また、来週12月18日・19日に開かれるFOMC(米連邦公開市場委員会)では、FRB(米連邦準備理事会)による年内4度目の利上げが行われる公算が高くなっています。
一方で、そうした景気減速懸念から、その後の利上げはしばらく打ち止めとなるのではという見通しも強まっています。
そうなると、新興国通貨からドルへのシフトも落ち着き、ドル安となっていきそうなところですが、単純にそうとも言い切れません。
というのも、ヨーロッパを見てみると、ブレグジット、イタリア不安、ECB(欧州中央銀行)による年内の量的緩和政策の終了、などの問題があります。
そのため、ユーロやポンドが忌避されるような動きが強まると、やはりドルへの選好が強まり、ドルは底堅い動きとなることが予想されるからです。(円はマイナー通過に過ぎず、円が大きく選好される可能性というのは低いでしょう。)
ただ、年単位で見た場合には、大きく円高ドル安となる場面がやって来るのではないかとの考えは、引き続き変わってはいません。
その理由に関しましては、前回9月に以下の記事の総括で書いていますので、よろしければご参照ください。