ここでは、日本銀行(以下、日銀)のETF買い入れと日経平均株価との関係性について見ていきます。
また、日銀のETF買い入れと海外投資家の売買動向とを合わせたものについても見ていきたいと思います。
Contents
1.日銀のETF買い入れ政策の概要
まずは、日銀によるETF買い入れ政策の推移についてです。
日銀による指数連動型ETF(上場投資信託)の買い入れは、2010年12月より実施されました。
当初は、2011年12月までの残高上限4500億円とのことで開始されましたが、その後、残高上限の引き上げが繰り返されてきました。
日銀によるETF買い入れ枠は、2013年4月4日に年間1兆円への拡大、2014年10月31日には年間3兆円への拡大が決定されました。
また、2015年12月18日には、「設備投資・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」の株式を対象とするETFを買い入れるとして、年間3兆円から3.3兆円へと3000億円の新たな枠が設けられることが決定され、2016年4月6日より買い入れが始まっていました。
さらに、2016年7月29日には年間3.3兆円から年間6兆円への拡大が決定され、9月21日にはETF買い入れ枠の内訳に関しても、TOPIX連動型ETFの買い入れ比率がそれまでの42%から70%へと変更されていました。
2.日銀ETF買い入れの累計額と日経平均株価
こうしたETF買い入れにより、2017年末の時点で累計で17兆円超のETFが購入されており、日銀は主要企業の実質的な大株主となっています。
当然に、日銀のETF買い入れによる日経平均株価への影響も大きいものと思われ、その累計額と日経平均株価の推移を示したのが以下の図です。
日銀のETF買い入れ累計額と日経平均株価の推移(2010年1月~)
これだけ見ると、日銀のETF買い入れは日経平均株価にそこまで影響していないようにも見えますが、ETF買い入れ累計額と日経平均株価との相関係数を調べてみると、約0.81と強い相関を認めています。
日銀のETF買い入れに関しては、日経平均株価やTOPIXが前引け(前場終了時)時点で、前日比マイナスとなっている場合に行われる確率が高いといわれています。
ですから、そういった操作による影響も大いにあるかとは思いますが、これだけの強い相関を認めているというのは注目に値することです。
3.海外投資家の累計売買金額と日経平均株価
そして、2017年末までの日銀のETF買い入れ累計額が17兆円超と書きましたが、上の図で示した2010年1月以降の海外投資家の東証1部株式の累計売買金額は20兆円超の買い越しとなっています。
ここで、海外投資家の売買動向を引き合いに出したのは、今や日本株の売買金額に占める海外投資家の比率は6割から7割、保有率では3割前後となっており、相場に大きな影響を及ぼしているためです。
なお、海外投資家の売買動向については、以下の記事で詳しく書きましたのでよろしければご参照ください。
ここでは、直近における海外投資家の累計売買金額と日経平均株価の推移について示した図を以下に載せておきます。
なお、2010年第1週を起点(ゼロ)として集計しています。
海外投資家の累計売買金額と日経平均株価の推移(2010年1月~)
こちらに関しては、図を見ても明らかですが、相関係数も約0.90と非常に強い相関を認めており、日経平均株価における海外投資家の影響力の高さを改めて感じさせられます。
4.日銀買い入れと海外投資家売買の合計
ここまで見てきたように、日銀によるETF買い入れと海外投資家の売買動向が日経平均株価に強い影響を及ぼしているということは間違いありません。
そこでさらに、この両者(日銀のETF買い入れ累計額と海外投資家の累計売買金額)を合計したものを日経平均株価の推移と比較してみたのが、以下の図になります。
日銀ETF買い入れ累計額と海外投資家の累積売買金額の合計と日経平均株価の推移(2010年1月~)
この図に関しても見て明らかではありますが、相関係数を調べてみると何と約0.96と驚くほど強い相関を認めています。
これは、ほとんど連動しているといっても過言ではないでしょう。
つまり、日経平均株価の動きをこの日銀のETF買い入れと海外投資家の売買動向の2つでほとんど説明できてしまうということになります。
そういったことから、今後の日銀の動向には十分な注意を払っておく必要があるといえます。
現在の年間6兆円という日銀のETF買い入れは、当面は継続されていくでしょうが、何年にもわたって継続していくというのはさすがに考えづらいためです。
そして、日銀が政策の見直しを迫られた際の相場への影響というのは、決して小さなものでは済まないでしょう。