1.ラップファンドとは
投資信託を買ってはいけない!のところで、金融機関が顧客に投信を乗り換えさせることを繰り返しては(回転売買)、販売手数料を稼いでいるということを書きました。
しかし、平成27年に森信親氏が金融庁長官となってから、金融機関に対して顧客本位の業務運営を求めるようになりました。
つまり、これまでのような金融機関の営業姿勢に対する金融庁の監督の目が厳しくなったのです。
もちろん、それだけで回転売買がなくなったわけでは決してありませんが、それをやりづらくなった金融機関が新たに力を入れ始めたのが、「ラップファンド」あるいは「ラップ口座」といわれるものです。
ラップ(wrap)とは、「包む」という意味であり、そこから転じて、ラップファンドとは証券会社などが顧客の資産の運用・管理をまとめて代行してくれるというサービスのこといいます。
ラップファンド自体は以前からあるものなのですが、最低投資金額が数千万円から数億円などといったようにもともとは富裕層を対象とした資産運用サービスでした。
それが、最低投資金額が300万円や500万円からなどと大きく下がり、中には10万円やそれ以下から投資可能というものまで出てくるようになったのです。
これはまさに、金融機関が投信の回転売買をやりにくくなったため、一般の個人向けにまでラップファンドの裾野を広げてきたということに他なりません。
事実、ラップファンドの残高は急速な伸びを見せています。
2.ラップファンドの高い手数料
ラップファンドでは、投資のプロが投資信託を厳選して資金を配分し、市場環境の変化に応じてリバランス(資産の再配分)を実施するなどと喧伝されます。
そういった謳い文句に乗せられて、例えば退職金などのまとまったお金をラップファンドに預けてしまうという人が少なくありません。
しかし、安易に虎の子の資金を預けてしまう前にしっかりと考える必要があります。
それは、ラップファンドの手数料についてです。
ラップファンドでは、運用管理手数料が資産残高に対して、年間2%前後もかかってきます。
さらに、ラップファンドの資金で運用される投資信託の信託報酬(運用管理手数料)もかかってくることになります。
つまり、運用手数料の二重払いのような状態であり、毎年3%前後もの手数料がかかってきてしまうのです。
ちなみに、これは複数の投資信託を投資対象とする投資信託であるファンド・オブ・ファンズでも同様のことがいえるので注意が必要です。
3.ラップファンドに代わる選択肢
ラップファンドでは、顧客から預かった資金が国内外の株式・債券やREITなどといった各種資産に振り分けられることになります。
各種資産への配分比率は、個々人のリスク許容度などにより変わってきますが、基本的には各種資産へバランスよく振り分けることが多くなるかと思われます。
そして、こういったラップファンドで行われているのと同様のことが、投資信託の高い手数料と投資信託に代わる選択肢のところでも書いたETF(上場投資信託)を使うことで実現できるのです。
それは、ETFには国内外の株式指数や債券、REITなど豊富な銘柄があるからです。
また、ETFでは信託報酬も低く、0.3~0.5%程度のものが多くあります。
証券会社などに任せきりにするのではなく、自分でETFを選択して買うという、少しの手間を惜しむか惜しまないかでこれだけ手数料が違ってきてしまうのです。
一方で、この程度の手数料の差はそれほど大したものではないと思われる方がいるかもしれません。
しかし、投資期間が長期になればなるほど、この手数料の大小がパフォーマンスに大きく影響してくるため、それだけ手数料には敏感になる必要があります。
ですから、ラップファンドは投信と同様に手数料が高く、検討するに値しないものであると考えています。
ラップファンドにお金を預けるくらいであれば、代わりにETFを利用して運用をするべきなのです。
くれぐれも退職金をラップファンドにつぎ込むなどといったことは、決してされないようにしていただければと思います。