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1.アパルーサ・マネジメント率いるデビッド・テッパー氏
今回は、デビッド・テッパー氏が率いる、アパルーサ・マネジメントの2022年12月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
デビッド・テッパー氏は、ヘッジファンド・マネージャーの運用報酬ランキングで、2009年、2012年、2013年にトップとなり、その後も、2016年3位、2017年5位、2018年3位と驚異的な成績を残しています。
特に2009年には、リーマンショック後に大きく売られた大手銀行株などを大量に取得し、辛抱強く持ち続けたことで、最終的に70億ドルもの利益を上げたと言われます。
また、2013年には、市場で不人気だった航空株への投資でリターンを出すなど、特定業種への集中投資で成果を出してきたことで知られています。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、デビッド・テッパー氏に限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、23年2月中旬には、著名投資家たちの22年12月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.アパルーサ・マネジメントのポートフォリオ
それでは早速、アパルーサ・マネジメントの2022年12月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位17銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2022年9月末時点でのポートフォリオを示したのが下図になります。
この両者間の違いを際立たせるために、ポートフォリオ全体に対する影響度の大きかった銘柄を中心に見ていくことにしたいと思います。
4.デビッド・テッパーのポートフォリオ・マネジメントと総括
まず、22年10月から12月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する増加率が1.0%以上であった銘柄について見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 増加率(%) | 組入比率(%) |
DIS | The Walt Disney Co | 1.93 | 1.93 |
HCA | HCA Healthcare Inc | 1.91 | 3.25 |
CZR | Caesars Entertainment Inc | 1.31 | 1.31 |
CHK | Chesapeake Energy Corp | 1.14 | 1.77 |
CRM | Salesforce Inc | 1.08 | 2.95 |
次に、22年10月から12月末までの間に、ポートフォリオ全体に対する減少率が0.4%以上であった銘柄についても見ていきます。
ティッカー | 銘柄名 | 減少率(%) | 組入比率(%) |
META | Meta Platforms Inc | -2.99 | 5.13 |
CEG | Constellation Energy Corp | -1.41 | 15.34 |
CHKEZ | Chesapeake Energy Corp | -0.69 | 1.46 |
AMLP | Alerian MLP ETF | -0.54 | 0.58 |
CHKEL | Chesapeake Energy Corp | -0.49 | 0.86 |
EPD | Enterprise Products Partners LP | -0.45 | 0.93 |
MOS | The Mosaic Co | -0.44 | 0.00 |
前四半期は、新規買いや買い増し銘柄がありませんでしたが、今回は、「DIS(ウォルト・ディズニー)」や急性期病院を運営する「HCA(HCAヘルスケア)」、カジノ関連の「CZR(シーザーズ・エンターテインメント)」を大きく購入しています。
なお、「CHK(チェサピーク・エナジー)」に関しては、同銘柄の「CHKEZ(チェサピーク・エナジー・クラスB ワラント)」を売ってもいるので、トータルでの増加率はやや下がります。
また、「META(メタ・プラットフォームズ)」やクリーンエネルギー企業の「CEG(コンステレーション・エナジー)」を売っているのも目立ちます。
「DIS」や「CZR」の買いなど、コロナがほぼ終息したことを受けてのものだと思われますが、ポートフォリオ全体の時価総額を見ると、22年12月末時点で、13.5億ドルとかなり低い水準のままであることが分かります。
直近でこそ、強い経済指標の発表をが相次いだことを受けて、FRB(米連邦準備制度理事会)がタカ派姿勢を強めていますが、22年の11月や12月にはハト派的な姿勢も見られていたことから、アパルーサ・マネジメントは慎重なポートフォリオ・マネジメントをしていたことが伺えます。
そういった意味では、アパルーサ・マネジメントが再びアクセルを踏み始めるのはどのタイミングになるのかを引き続き、注視していきたいところです。