投資信託を買ってはいけない!のところで、投資信託(以下、投信)の売れ筋ランキングでは、上位に手数料の高いものが並ぶ傾向があると書きました。
その手数料が高い商品として代表的なものが、「毎月分配型」といわれるタイプの投信です。
毎月分配型の投信では、その名の通り分配金が毎月支払われるため、年金代わりになるという謳い文句で、年配の方を中心に人気を博しています。
しかし、この毎月分配という商品設計は実は買い手にとっては不利なものであり、本来であれば、普通の設計の投信以上に勧められるべきものではありません。
どう不利なのかは、少し難しくなってしまうので、読み飛ばしていただいても構いませんが、簡単に触れておくと、複利効果を享受できなくなる、課税のタイミングが早くなる、などといったことが挙げられます。
また、分配金が毎月のように支払われると聞くと、利益も毎月出していて、そこから分配金が支払われていると思われる方が多いかと思います。
ただ、少しでも投資をしたことがある方であれば、すぐにお分かりになるかと思いますが、毎月のように安定して利益を出し続けることは至難の業です。
もちろん投信においても、それは例外ではありません。
では、どのように分配金を出し続けているのかというと、利益だけから支払えない場合には、元本を取り崩して支払っているのです。
そして、利益から支払われる分配金のことを「普通分配金」というのに対し、元本を取り崩して支払われる分配金のことは「特別分配金」といわれていました。
さすがに、最近では「特別分配金」ではなく、「元本払戻金(特別分配金)」との表記に変更されましたが、「特別分配金」という言葉では、投資家はまさか分配金が元本を取り崩して支払われたものだとは思わなかったでしょう。
こういったところにも、金融機関の投資家に対する営業姿勢がよく表れていると感じるのは私だけではないはずです。
そもそも、以前は銀行や郵便局では、投信なんかは販売されていませんでした。規制緩和により、1998年に銀行で、2005年に郵便局で投資信託の販売が解禁されたのです。
これはつまり、銀行や郵便局が、楽に儲かる“おいしい”商売に手を染めるようになったということです。
そういった経緯があり、今では毎月分配型の投信が人気を博すようになっているのです。
さらに、毎月の分配金が高いほど人気も出るため、高い分配金を支払えるような設計の投信が開発されてきました。
詳しいことは分からなくても問題ありませんが、具体的には、投資対象を金利の高い新興国通貨建てのものにしたり、カバードコールと呼ばれるオプション戦略を組み合わせたりといった具合です。
確かに、それにより高い分配金を支払うことが可能にはなりますが、それは同時にその投信のリスクが高まることにもつながります。
にもかかわらず金融機関は、目先の高い分配金をエサにして、非常にリスクの高い商品を販売するようになっていったのです。
しかも、そういった複雑な商品設計にすることにより、当然に手数料も高くなります。
過度なリスクをとってでも分配金を高く設定することで人気も高まり、手数料も多くとれるという、金融機関にとっては二度おいしい商品になるというわけです。
ただ、そういった投信の開発者(運用会社)や販売者(金融機関)だけが悪いと言うつもりはありません。
彼らは売れるから、そういった商品を作るのです。
何も考えずに、ただ目先の高い分配金に目がくらんで、自分が非常にリスクの高い商品を購入しているということを全く理解していない投資家の方にも責任があります。
ですから、せめてこの記事を読んで下さっているあなたには、是非ともそのような愚をおかさないようにしていただければと思うのです。