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1.フィッシャー・インベストメンツ率いるケン・フィッシャー氏
今回は、ケン・フィッシャー(ケネス・ローレンス・フィッシャー)氏が率いる、フィッシャー・インベストメンツの2021年3月末時点でのポートフォリオについて見ていきたいと思います。
ケン・フィッシャーは、故フィリップ・A・フィッシャーを父に持ち、米国有数の著名投資家であると同時に、米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者でもあります。
なお、フィリップ・A・フィッシャーは、ウォーレン・バフェットが師と公言し、成長株投資の礎を築いた伝説的投資家です。
そして、ケン・フィッシャーは、フォーブス誌に「ポートフォリオ・ストラテジー」というコラムを1984年から長期連載しており、投資に関する著書も数多くあります。
中でも、『Super Stocks』(邦訳:『ケン・フィッシャーのPSR株分析』)では、PSRの有効性をケン・フィッシャーが初めて提唱したと言えます。
ただ、このPSRに関しては、その後の『The Only Three Questions That Count』(邦訳:『投資家が大切にしたいたった3つの疑問』)の中で、広く知れ渡ったことによりPSRは機能しなくなったと述べています。
また、同書では、他人には知ることのできない優位性を継続的に発見し、投資判断を常に改善・修正していくための方法が書かれており、その深い洞察力には驚かされます。
2.米証券取引委員会(SEC)への報告書提出義務
さて、ケン・フィッシャーに限りませんが、著名投資家たちのポートフォリオを知ることができるのには理由があります。
これは、米国では運用資産が1億ドル以上の機関投資家は、四半期ごとに証券取引委員会(SEC)への報告書提出が義務付けられているためです。
この報告書は、SECのホームページから閲覧することができ、著名投資家たちのポートフォリオの保有銘柄や株数などを知ることができるのです。
ただ、各四半期末から45日以内が報告書の提出期限であることから、公開されたポートフォリオが最新のものであるとは限らない点には注意が必要です。
また、公開されるのは、米国上場株および、ロングポジションのみとなっています。
さて、各四半期から45日以内が提出期限ということから、2月中旬、5月中旬、8月中旬、11月中旬に報告書が更新されることが多くなります。
つまり、5月中旬頃までには、著名投資家たちの3月末時点でのポートフォリオが数多く公開されるというわけです。
3.フィッシャー・インベストメンツのポートフォリオ
それでは早速、フィッシャー・インベストメンツの2021年3月末時点でのポートフォリオを見ていきます。(図では上位24銘柄を示しています。)
また、この四半期前の2020年12月末のポートフォリオを示したのが下図になります。
この両者を比較してみると、あまり大きな変化はないのですが、VCIT、LQDといった米国社債ETFのウエイトが、それぞれ14.5%増、5.8%増と、若干ですが高くなっています。
ちなみに、VCIT(バンガード・米国中期社債ETF)は、残存期間5~10年の社債が95%となります。
また、LQD(iシェアーズ iBoxx米ドル建て当期適格社債ETF)は、残存期間20年超の社債が約3割と最も多く、次いで3~5年と7~10年の社債が約2割ずつとなっています。
4.ケン・フィッシャーの主な新規買い銘柄と総括
ここからはさらに踏み込んで、20年12月末から21年3月末までの間に、フィッシャー・インベストメンツが新規買いした主な銘柄について見ていくことにします。
以下の表は、新規買いが行われた77銘柄のうち、保有ポジションの高い順に15銘柄を取り出したものです。
ティッカー | 銘柄名 | 組み入れ比率 |
IEF | ISHARES TRUST | 0.7 |
CGNT | Cognyte Software Ltd | 0.02 |
ARNC | Arconic Corp | 0.01 |
SWAV | ShockWave Medical Inc | 0.01 |
X | United States Steel Corp | 0.01 |
AMKBY | A. P. Moller Maersk A/S | 0 |
ATTBF | Abattis Bioceuticals Corp | 0 |
ADYEY | Adyen NV | 0 |
ACM | AECOM | 0 |
ARGSQ | Argos Therapeutics Inc | 0 |
BMO | Bank of Montreal | 0 |
BAX | Baxter International Inc | 0 |
BBY | Best Buy Co Inc | 0 |
BTSC | Bitcoin Services Inc | 0 |
BNL | Broadstone Net Lease Inc | 0 |
新規買いは、77銘柄と多いものの、上位15銘柄だけを見ても、各銘柄のウエイトは非常に小さいことが分かります。
また、新規買い銘柄においても、業種から規模まで幅広く分散していることが見て取れます。
そして、新規買い銘柄の中でも、IEF(iシェアーズ 米国国債7-10年ETF)と債券の比重が最も大きくなっていることが目に付きます。
つまり、2021年1月から3月の間に、上述のVCITやLQDといった米国社債と併せて、米国中期国債も購入していたというわけです。
ここで、2020年初からの米10年国債利回りの推移を示したのが下図になります。
この図から、21年1月から3月は、米長期金利の上昇が加速していた時期であることが分かります。
つまり、債券価格は下落し続けていたはずですが、この局面で債券ETFを買っていたということになります。
実は私も、米国債のETFを組み入れるタイミングを狙っていたのですが、米長期金利はもう少し上昇するのではないかと思い、結局買うことができずにいました。
21年4月以降、米長期金利は概ね横ばいとなっていますが、今後2%に向けて上昇を再開するようであれば、少しずつIEFのような債券ETFをポートフォリオに加えていくことを検討したいと考えています。
おそらく、ケン・フィッシャー氏も、当面は米長期金利が2%を超えて大きく上昇するとは考えていないはずで、米長期金利が上昇を再開したら、債券ETFを買い増していくのではないかと思われます。
米FRBは年内にも債券購入を縮小するのではないかと見られており、実際にそうなれば、あるいはそれについての言及があれば、債券価格の上昇が期待できるかもしれません。