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1.株主優待
今回は、株主優待と配当について、思うところを書いていきたいと思います。
まず株主優待といえば、元プロ棋士でもある桐谷広人さんを思い浮かべる人が多いかと思いますが、桐谷さんの影響で優待銘柄に関心を持ったという人も多いでしょう。
また少し前までは、マネー雑誌で株主優待の特集が組まれることも多かった印象です。
そんなこともあって、個人投資家に人気の株主優待ですが、今年はコロナ禍による企業業績悪化の影響で、縮小・廃止されるケースが増えています。
特に、使い勝手が良かったり、魅力的な株主優待のある銘柄というのは、優待目当てで買っている個人投資家が多いため、優待の縮小・廃止は大きな株価下落要因となってしまいます。
ただ、そういった銘柄というのは、個人投資家によって、まず優待ありきで、バリュエーション(企業価値評価)度外視で買われていた印象が強くあります。
つまり、元々の株価が割高な水準にあったということです。
もちろん、どうしても欲しい優待があるという場合には、多少株価が割高な水準にあっても、保有し続けるという判断や選択肢もあり得ます。
しかし、あくまで株式投資で資産を築くということが目的なのであれば、優待に目がくらんで、割高な株価で購入してしまっては本末転倒です。
そして、優待があるからといって、株価の低迷した銘柄を持ち続けることは、資金効率の低下にもつながるため、できれば避けたいところです。
ですから、そういったことがないように今一度、自分が株式投資で最終的に得たいものは何かということを自問してみる必要性があるかもしれません。
もっとも、これをお読みになって下さっているような投資家の方にとっては、釈迦に説法かもしれませんが。
2.配当
次に、配当についてです。
主力銘柄の高配当株に投資するという戦略はしばしば推奨され、中でも「ダウの犬」と呼ばれる投資法が有名です。
この「高配当株」に関して、10/16付けの日経新聞の『ドコモの「4兆円」どこへ 再投資先、高配当株ふるい』という記事で、次のような記述がありました。
大和証券が東証株価指数(TOPIX)500採用銘柄のうち、配当利回り上位20%の銘柄群を調べたところ、値動きは2000年以降、安定して市場平均を上回ってきた。日銀が異次元緩和を始めた13年以降は市場全体が底上げされるなかで優位性が低下し、新型コロナウイルス禍に見舞われた今年は、市場平均を下回る状況が続いている。
理由の一つは「高配当株のシクリカル(景気敏感)化」にある。ドコモと同水準の配当利回りがある銘柄は国際石油開発帝石や三井物産、銀行株などだが、外部環境の悪化で利益見通しに不透明感が漂う。
大和証券の目野博之シニアクオンツアナリストは「かつての高配当株だった電力など安定業種が抜け、銀行や輸出関連が配当利回り上位を占めるようになった」と指摘する。コロナ禍で急激に業績が悪化し、減配に転じる企業も目立つ。
かつて高配当株といえば、記事にもあるような電力株などのディフェンシブ株が中心でしたが、昨今では高配当株の中にシクリカル株が多くなっていると言うのです。
3.シクリカル株の扱いは難しい
そして、このシクリカル株の扱いには実は注意が必要です。
というのも、シクリカル株には、タイミングが全てといった要素が多分にあるためです。
景気循環のピークでは、その企業の利益もピークに達し、PERもかなり低くなることがありますが、その後に景気がピークアウトすると株価が急落することがあるのです。
しかも、シクリカル株には有名な大企業の株も多いので、一見すると大型優良株のように見えます。
ですから、できれば過去10年以上の業績の推移を見て、その銘柄にシクリカル的な要素がないかどうかはチェックする必要があると言えます。
つまり、ディフェンシブ株が中心であった、かつての高配当株戦略のように、長期にわたるバイ&ホールドという戦略が通用しづらくなってきているということです。
4.総括
このように、過去のある一定期間にわたって有効性の高かった投資戦略であっても、ある時期からその戦略の有効性が著しく低下してしまうといったことが、投資の世界ではしばしば起こります。
そして、そのある時点というのは、その戦略が多くの投資家に広く知れ渡った時であると言えます。
どんな戦略であっても、それを採用する投資家の数が多くなれば、自ずとその戦略の有効性は低下してしまうものなのです。
さらに言えば、半永久的に有効性が持続し続ける投資戦略というのは、存在しないのではないかと考えています。
とは言っても、いずれは全ての投資戦略が無効になってしまうと言っているわけではありません。
分かりやすい例で言うと、グロース株投資とバリュー株投資のように、一方が有効な時期が何年も続いた後に、もう一方が有効な時期が続くなどといったことになります。
要するに、どんな投資戦略であっても、それが機能する時期もあれば、機能しない時期もあるということです。
そのため、投資戦略についても分散したり、可能であれば時と場合に応じて使い分けたりするようなことが必要になってくるのではないでしょうか。