毎年、年末年始の時期になると、干支(かんし、えと)と株式市場についての話題がよく出てきたりします。
そこで今回は、新年を迎えたばかりである2020年の日経平均株価について、干支という観点から考えていきたいと思います。
その前にまずは、干支(かんし、えと)とは何かからです。
1.干支とは?
干支というのは、十干と十二支を組み合わせたもので、60通りのものがあります。
例えば、2018年の干支は「戊戌」、2019年は「己亥」、2020年は「庚子」といった具合です。(読み方に関しては後述します。)
この干支のうち、十二支については比較的よく知られていますが、十干についてはあまり馴染みがないかもしれません。
干支の「干」は幹、「支」は枝という漢字の右側に含まれ、本来であれば枝よりも幹である十干の方が広く知れ渡っていてしかるべきといえるかもしれませんが、やはり十二支は動物で馴染みやすいというのが大きいのでしょう。
それでは、干支を具体的に見ていきますが、干支とその読み方を示したのが以下の表になります。
なお、十干については、読み方の参考のために、陰陽五行論における五行(木・火・土・金・水)と陰陽の分類についても載せてあります。
2.十二支と日経平均株価
ここからは日経平均株価を干支の観点から見ていきますが、まずは馴染みのある十二支の方からです。
十二支に関しては、次のような相場格言がありますので、それと比較しながら検証していきたいと思います。
その相場格言とは、少し長いのですが、「辰巳天井、午尻下がり、未辛抱、申酉騒ぐ、戌笑い、亥固まる、子は繁栄、丑つまずき、寅千里を走る、卯は跳ねる」というものです。
これを相場の上下で解釈していくと、辰巳は天井、午は下落、未は横ばい~調整、申酉は乱高下、戌は上昇、亥は値固め、子は上昇、丑は調整、寅は大きく上昇、卯はもう一段高、といったところでしょうか。
そして、実際に日経平均株価の1914年から2019年までの年間騰落率に関して、十二支ごとに騰落率の平均値(%)、最大値(%)、最小値(%)および、上昇した回数、下落した回数、横ばいの回数を示したのが、以下の表になります。
また、上記と同様のものについて、1950年以降で見たのが以下の表です。
この1914年以降、1950年以降のそれぞれについて、十二支ごとの年間騰落率の平均値をグラフにしたのが以下になります。
これらの表やグラフを見ながら、先の相場格言と比較してみます。
そうすると、「申酉騒ぐ」や「亥固まる」など、これだけでは何ともいえないようなものもありますが、いくつか特徴的なものを見ていきたいと思います。
まず、午年には平均して下落しており、その前の辰巳には上昇していることから、「辰巳天井、午尻下がり」は格言通りといえそうです。
また、「子は繁栄、丑つまずき」や「卯は跳ねる」も概ね当てはまっていそうです。
ただ、「寅千里を走る」に関しては、その言葉の印象とは逆に冴えない結果となっています(1914年以降:1勝8敗・平均-0.7%、1950年以降:1勝5敗・平均2.3%)。
ちなみに、昨年2019年(亥)の日経平均株価は約20%もの上昇となり、「亥固まる」や「戌亥の借金、辰巳で返せ」といった相場格言を超えるものでした。
これは格言通りというよりも、概ね亥年の過去の平均騰落率に沿うような結果となっています。
そして今年の子年については、「子は繁栄」の格言通り、過去の年間騰落率が十二支の中で、一二を争う上昇率となっていることが分かります。
3.十干と日経平均株価
続いて、十干についてです。
十干についても、日経平均株価の1914年以降および1950年以降(2018年まで)の年間騰落率に関して、十干ごとに騰落率の平均値(%)、最大値(%)、最小値(%)および、上昇した回数、下落した回数、横ばいの回数を見ていきます。
そして、この1914年以降、1950年以降のそれぞれについて、十干ごとの年間騰落率の平均値をグラフにしたのが以下になります。
これらの表やグラフを見ると、「丁」や「庚」の年は冴えず、「己」や「壬」の年は平均して大きく上昇していることが分かります。
なお、「丁」の年というのは、西暦でいうと下一桁が「7」で終わる年になりますが、これに関しては「7の年のジンクス(アノマリー)」というものがあります。
これは、末尾が「7」で終わる年は相場が荒れるというもので、実際に以下のような出来事がありました。
- 1987年:ブラックマンデー(10月19日)
- 1997年:アジア通貨危機(7月~) (→1998年10月:LTCMショック)
- 2007年:サブプライム問題 (→2008年9~10月:リーマン・ショック)
ただ、直近の2017年に関しては、日経平均株価は堅調な推移となり、特に相場が大きく荒れるようなことはありませんでした。
そして、今年2020年は「庚」の年ですが、過去の平均年間騰落率を見ると、十干の中で最も悪いパフォーマンスとなっています。
ちなみに、「庚子」という干支は、「沈石」すなわち、水に没する岩石の様であり、昨年の「己亥」同様に、水害などに注意が必要な1年となるかもしれません。
さて最後に、陰陽五行論では現在がどのような時代なのかを見ていきたいと思います。
4.陰陽五行論の時代論から見る日経平均株価
陰陽五行論では、国家の動向を、その国の憲法記念日を起点として、50年サイクルで見ていく「時代論」という考え方があります。
日本の憲法施行日は1947年5月3日ですので、これを起点とし、10年ごとに次のような順で時代が移り変わっていきます。
- 動乱期:国の形が定まりきっていない、動乱の時代。1947~1956年、1997~2006年。
- 習得(教育)期:国が安定し、将来を担う人材が出始める時代。1957~1966年、2007~2016年。
- 平和(経済確立)期:人材が育ち、経済が繁栄する時代。1967~1976年、2017~2026年。
- 庶民台頭期:庶民に経済力がつき、庶民文化が花咲く時代。1977~1986年、2027~2036年。
- 権力期:官僚・政治家の支配力が強まり、国力が衰退する時代。1987~1997年、2037~2046年。
これを図にしたのが、以下の図です。
ちなみに、この図にある鬼門(表鬼門・裏鬼門)を通過する時期には、鬼門通過現象といって、大きな事件や災害などが起こるとされています。
そして、2020年はどこに位置するかというと、なんと平和(経済確立)期にあります。
つまり、時代論からは、現在は経済が繁栄へと向かう時期であり、さらにその後2027年からの10年間は庶民にも恩恵が巡ってくる時代だと読み解くことができるのです。
5.総括
「庚子」を十干および十二支別に見ると、「庚」の年と「子」の年で、真逆のパフォーマンスを示す結果となってしまいました。
また、昨年の2019年に日経平均株価が大きく上昇したことなども併せると、2020年は上昇したとしても、そこそこのパフォーマンスで終わることになるのではないかと思われます。
そして今年は、東京オリンピックや米大統領選挙があり、特に米大統領選挙では波乱も予想されますが、「庚子」は波乱や動乱の中でこそ真価を発揮する干支でもあります。
一方、前回の「米国株のデータ分析(2019年12月)」で書いたように、米国債の逆イールド発生からの日柄や、中国の社債償還日程などから、相場の大幅な調整という点では、今年よりも2021年や2022年に警戒が必要ではないかと考えています。
そういったことから、ここ数年を乗り越えられれば、かつ憲法改正が為されなければ(憲法が改正されると再び「動乱期」からのスタートとなってしまう)、「時代論」で見るように今後20年近くの日本の将来は明るいものと信じています。