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1.乖離率とは
乖離率とは、移動平均乖離率ともいい、市場価格が移動平均からどれだけ離れているかを示す指標になります。
乖離率を計算するもととなる移動平均というのは、5日や25日間、13週や26週間などといった過去のある一定期間の市場価格の平均をとったものになります。
乖離率では25日間の移動平均が用いられることが多く、25日移動平均乖離率は以下の計算式で求めることができます。
25日移動平均乖離率(%)=(市場価格ー過去25日間の終値の平均値/過去25日間の終値の平均値×100
この式からも分かるように、市場価格が移動平均よりも高ければ乖離率はプラスの値となり、逆に移動平均よりも低ければ乖離率はマイナスの値となります。
一般に乖離率では、5%以上で目先の天井、-5%以下では目先の底とされ、10%以上では天井圏、-10%以下では底値圏とされます。
このように、市場価格が移動平均から大きく離れて、乖離率の絶対値が大きくなった場合には、市場価格が行き過ぎているとみて、それがゆくゆくは修正されていくだろうという考え方が乖離率の根底にあるのです。
つまり、乖離率は相場反転の目安として用いられるということです。
2.乖離率の検証
それでは、実際に過去の日経平均株価とその25日移動平均乖離率との関係を、①1986~1995年、②1996~2005年、③2006~2015年、④2015年~と4つに分けて見ていきたいと思います。
まずは、下記の①1986~1995年の図をご覧下さい。
①1986~1995年の日経平均株価と乖離率(25日)
まず、80年代後半のバブル期には株価が勢いよく上昇していますが、乖離率はそれほど上昇していないことが分かります。
一方で、全体的に乖離率が-10~-15%となったところでは、目先の底や底値圏を割とよく捉えています。
ただ、バブル崩壊後の下落過程である1990年4月初めのように、乖離率が約-13%となって底値圏を示唆していても、その後に多少戻してからまた大きく下落していったような動きには注意が必要です。
次に②1996~2005年の図を見ていきます。
②1996~2005年の日経平均株価と乖離率(25日)
この期間においても、乖離率が-10%前後となったところでは目先の底を概ね捉えています。
しかし、2000年のITバブル崩壊における下落で、2000年5月に乖離率が約-11.5%となって目先の底をつけた後にまた大きく下落していくような動きにはやはり注意が必要です。
そして、この期間においては、乖離率が10%前後となったところに関しても目先の天井を概ね捉えているように見えます。
ただ、乖離率が2000年4月初めの大天井を全く示唆していないのが気になるところではあります。
同様に、2003年4月末の大底も乖離率ではうまく捉えられていません。
この両者では、大天井や大底を急激にではなく緩やかに形成していっているという点で共通しています。
なお、もう一度①1986~1995年の図を見ていただくと、バブル期の大天井においても乖離率が機能していないことが分かります。
以上から、乖離率はある程度急激な動きによるものでないと、目先の天井や底をうまく捉えることができないのではないかと思われます。
さらに、③2006~2015年の図を見ていくことにします。
③2006~2015年の日経平均株価と乖離率(25日)
この期間においても、①や②で書いたことと全く同様の傾向が認められます。
繰り返しになってしまいますので、ここではそれらを確認していただくに止めたいと思います。
では、最後に④2015年~の図を見ていきます。
④2015年~の日経平均株価と乖離率(25日)
①~③では10年間という長期間の図でしたので、プラスマイナス5%前後の乖離率については考慮してきませんでしたが、④では直近数年間と比較的短期間の図になりますので、プラスマイナス5%水準についても見ていきたいと思います。
そうすると、乖離率がプラスマイナス5%前後の水準というのは、目先の天井や底を割と良く捉えていることが分かります。
また、-10%前後のところでも底値圏をよく捉えているといえます。
3.乖離率まとめ
以上から、乖離率についてまとめると次のようになります。
- 短期的な観点からは、プラスマイナス5%が目先の天井や底を示唆している。
- 長期的な観点からは、目先の天井や天井圏の判断においては乖離率があまり機能していない。
- また、目先の底や底値圏を判断する際には、-10~-15%が目安となる。
- ただし、緩やかに底値を形成していくような局面では乖離率があまり機能しない。
このように、乖離率は緩やかな動きには弱く、急な動きのときに真価を発揮するということがいえそうです。
一般に、相場というのは緩やかに上昇していき、下落するときは急な動きとなりますが、これも乖離率が目先の天井や天井圏の判断においてあまり機能しないことと辻褄があうように思います。
ですから、相場が急落に見舞われたようなときこそ、乖離率に注目するといいでしょう。
そして、そこで乖離率が大底を示唆していたとしても、さらに下落する可能性というのは念頭に置いておかなければなりません。