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「金(ゴールド)価格」を需要と供給、NY金先物のCFTC建玉明細から見る!

今回は、金(ゴールド)相場についてです。

金価格は、2017年12月中旬の1250ドル前後から、直近の1350ドル前後へと、この1ヵ月半で100ドル近く上昇しています。

この値動きの背景や今後の金相場を考えるためにも、ここでは主に金の需要と供給という観点から、金相場について見ていきたいと思います。

1.NY金先物価格について

ここでの金価格とは、ニューヨーク(NY)金先物価格のことを指し、その価格は国際的な金価格の指標となっています。

NY金先物は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の一部門であるCOMEXで取引されており、NY金先物価格は、1トロイオンス当たりのドル建てで表示されます。

トロイオンス(oz tr、oz t、ozt)というのは、貴金属などで用いられる重量の単位で、単にオンス(oz)ともいいますが、1オンスは約31.1グラムになります。

また、金の元素記号はAuですが、1オンスの金はXAUと表記されることもあります。

2.世界の金供給

それでは早速、世界の金の需給について見ていきますが、まずは供給の方からです。

以下の図は、2007年以降の世界の金供給量の推移を示したものになります。

世界の金供給量の推移を示した図

この図から、金は鉱山生産からの供給が最も多いことが分かります。

また、鉱山生産量は、緩やかな右肩上がりとなっており、直近の2016年では供給の約71%を占めるまでとなっています。

リサイクルからの供給に関しては、3割前後で推移していますが、金価格の動向に左右される傾向が見てとれます。

3.金の国別鉱山生産量(2016年)

そして、金の最大の供給源である鉱山生産量について、2016年のものを国別に見たのが以下の図です。

2016年の金の国別鉱山生産量の円グラフ

この図からも分かるように、金は世界中で広く産出されています。

金と同じ貴金属の中でも、例えばプラチナでは、南アフリカの鉱山生産量が約7割となっており、南アフリカの経済・社会情勢がプラチナ価格に影響してくることがあります。

ですが、金に関しては、そういったリスクは低いといえます。

4.世界の金需要

次に、世界の金の需要についてです。

以下の図は、2007年以降の世界の金需要量の推移を示したものになります。

世界の金需要量の推移を示した図

直近の2016年におけるの需要は、宝飾品が約53%、工業用が約10%投資用(金地金・コイン)が約30%、公的部門が約7%となっています。

そして、この金の需要に関しては、銀やプラチナといった他の貴金属と比較してみることで、その特徴が見えてきます。

同じく2016年のの需要を見ると、宝飾品が約20%、工業用が約55%投資用(銀地金・コイン)が約20%、銀器が約5%となっています。

また、2016年のプラチナの需要は、宝飾品が約28%、工業用が約65%(自動車触媒が全体の約42%)、投資用(プラチナ地金・コイン)が約7%となっています。

このように、金の需要と、銀やプラチナの需要とを比較してみると、銀やプラチナでは工業用需要が多くなっていることが分かります。

一方、金では工業用需要は約10%と少ないものの、投資用需要が約30%と多くなっているのです。

5.ETFの金需要

ここで、世界の金需要量の推移を示した図の中にあった「ETF」という項目は、「ETF(上場投資信託)の在庫構築」のことを指しています。

この「在庫構築」というのは、金の現物(金地金)に直接投資するようなETFにおける、金保有量の増減を示しています。

そういった金地金を保有するようなETFでは、流入した資金により金地金が購入され、資金流出により金地金が売却されます。

参考までにですが、金の代表的なETFである、SPDR ゴールド・シェア(GLD)の金現物の保有量の推移を、金価格の推移とともに示したのが以下の図になります。

SPDRゴールド・シェアの金保有量と金価格の推移を示した図

この図から、ETFの金保有量は、金価格に大きく影響されるということが分かります。

なお、この図における金価格のLBMAというのは、ロンドン貴金属市場協会のことで、LBMAは世界の金現物取引の中心となっています。

そのため、LBMA金価格というのは、金現物取引における金価格の国際的な指標となっているのです。

6.金の投資用需要

さて、2016年の世界の金需要量は、投資用(金地金・コイン)が約30%を占めていると書きました。

そして、この投資用需要に関して、「金地金・コイン」の需要に、先ほどの「ETFの在庫構築」を加えた、広義の投資用需要量の推移を金価格と比較したのが以下の図です。

世界の金の投資用需要量と金価格の推移を示した図

すると、この図からも明らかなように、広義の投資用需要量と金価格との間には強い相関が認められることが分かります。

7.金価格とCFTC建玉明細

そこで最後に、投資用需要ということに関連して、NY金先物における投機筋の売買状況を、CFTC建玉明細をもとに見ていきます。

このCFTC建玉明細というのは、米商品先物取引委員会(CFTC)が、米先物市場における大口トレーダーの建玉明細を発表しているものです。

このうち、特に投機筋の買い建玉から売り建玉を差し引いた、ネットポジションについて、ここでは見ていきます。

そのNY先物における投機筋のネットポジションと、金価格との推移を示したのが以下の図です。

CFTC建玉明細における投機筋ポジションと金価格の推移を示した図

この図における、両者の相関係数は約0.74と強い相関を認めています。

そういった意味でも、金先物市場における投機筋の動向というのは決して無視できません。

そして、ここまで金現物の需給や金先物のCFTC建玉明細について見てきましたが、金というのは現物にしても先物にしても、投資的な要素の強い商品であるといえます。

この金に関係してくる投資的な要素というのは具体的に、為替相場市場金利との比較、物価変動との関係性、テロや戦争などといった地政学的リスク金融不安などといったことが挙げられます。

これらのことに関しては、以下の記事で書いていますので、よろしければご参照ください。

 

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