読書録・書評

【読書録・書評】『株式成功の基礎―10億円儲けた人たち』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.書籍の概要

まずは、本書の概要からです。

本書は、相場師として名を上げ、生涯を通じて個人投資家教育にも尽力した、林輝太郎氏による著作です。

本書では、「株式成功の基礎」ということで、単純な基礎を繰り返し行うことの重要性について書かれています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 第1部:成功者は多いのに
  • 第2部:私の50年の経験
  • 第3部:テクニカルズと上手下手
  • 第4部:相場のわざ

ここでは、本書の中で気になった部分や参考になった部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。

2.売買のやり方

本書では、売買のやり方について、次のように書かれています。

売買のやり方は、単なる「当てもの売買」ではなく、 資金を考慮して、リスクを考え、将来の手仕舞いを見越して、行うのであり、それが「相場の(売買の)技術(技法)」と呼ばれるものなのである。

つまり、単なる見通しの当たり外れとは全く別のもので、価格変動の波に乗る上手下手によって成功不成功が分かれるものなのです。

ですから、「見込みが当たってもやり方が下手なら損する」、あるいは「見込みの適不中(当たり外れ)にかかわらず、商内の方法だによろしければ利益を博する」のです。

そして、売買のやり方、相場技法の中心になるのは、次のような項目になります。

  1. 満玉張らない:資金に余裕を持つ
  2. 損切りできる:見込みちがいの玉を切る。塩漬け玉を持たない
  3. 分割売買をする:一発必中の当てものをしない

3.売買の禁止事項

Ⅰ.の満玉張らない(資金いっぱいの売買をしない)ということの他にも、全ての方法、流派を問わず、株の売買で成功したいならば絶対に守らなければならないこととして、次のようなものが挙げられています。

  • 絶対に手掛けてはいけない種類の株:仕手株、人気株、テーマ株、品薄株、新規公開株、二部と青空株(店頭株)(いまならマザーズ、ジャスダックなどであろう)
  • 絶対にやってはいけない売買:指し値注文、信用の買い、月曜の新規売買、資金いっぱいの売買
  • 絶対にやってはいけないこと:強弱論争(これから上がるか下がるかの議論)

筆者は、これらのことを50年以上守ったと言います。

4.損切りの重要性

そして、一番難しいのが、Ⅱ.の損切りであると書かれています。

ここで、売買をするということは、価格変動の波に乗るということになります。

変動の波に乗れたときに、枚数を多く、値幅を大きく、したがって利益を多く、波に乗り損なったときに、枚数を少なく、値幅を小さく、したがって損失を少なく、差し引き利益に持っていかなければならない。

この「乗り損なったとき」に、損失を少なくするためにも、損切りが重要になってくるのです。

また、次のようにも書かれています。

「乗り損なった」という判断は感覚であり、損切りは技術であるが、その感覚は自分自身のものなのだ。

慣れないうちは「乗り損なった」という判断ができない。だから、値幅を決めておくとよい。「五分逆行」でもよいし「20円逆行で切る」でもよいが、%は端数が出て決断しにくいから、値幅の方がよいだろうが、切るという決断もまた慣れないとできない。

いやいやでも損切りを2、3回やってみるほかはない。そういう苦しい経験をしてだんだん上手になっていくのである。

5.ナンピン(難平)のやり方

Ⅲ.の分割売買と関連して、ナンピンについても詳しく書かれています。

ナンピンは絶対にやってはいけないと書いてある本もあるが、無計画にやるのがいけないのであって、「はじめから計画を立てて買い下がる(売り上がる)」ことが大事だというわけです。

当然ですが、ナンピンの目的は、「総建て玉の平均を有利にしよう」というもので、【1~1】で合計【2】のような等分割よりも、【1~3】で合計【4】のような不等分割の方が、平均値は有利になります。

ナンピンの練習に関しては、次のように書かれています。

ナンピンの心理的負担は非常に大きく、また失敗の処置ができないと損をさらに大きくする。よって、はじめは少枚数の二分割か三分割で、上記の三分類のうちひとつ(自分の性質に合うもの。好きなもの)を決めて何回かやってみる。

また、【慣れれば、失敗だったことが途中でわかるが、はじめはわからないから何かの基準を決めておくほうがよい】とのことで、ナンピン失敗のときの処理についても触れられています。

具体的には、次のようなものが挙げられています。

  1. 割合(例えば1回目から10%逆行したら失敗と判断する。または3回目から5%逆行で切る、というようなやり方)
  2. 値幅(ナンピン開始の値からいくらまでは規定方針を続けるが、それを越えたら直ちに切る)
  3. 日柄(日数。例えば10日、あるいは1か月経過したときに切る)を、はじめに決定しておいて、それに適合したら他にいかに好材料があっても玉を切る(損切りをする)。

なお、損切りに関しては、プロでも相当な熟練者でありながら自分の方針を一途に貫いている人が多いと言います。

6.総括

本書の中には、【未だに(上か下か)「当たる確率の高いシステム」を作ろうとコンピュータ相手にものすごい努力をしている人がたくさんいる】とあります。

また、【「相場というものは、そもそものはじめから、誤解と錯覚に満ち満ちているものだ、ということがわかって、おそろしくなる」くらいである】とも書かれています。

本書では、そういった誤解や錯覚に基づいて「当てもの売買」を行う、売買確率論者ではなく、相場技法によって価格変動の波に乗る、売買技法論者の考え方・やり方などについて書かれています。

そして、これと似たようなことは、著者の他の書籍でも多く書かれていますが、本書では次にあるように、特に「損切り」の重要性について書かれているのが印象的でした。

とにかく、塩漬け株は儲からない。絶対に塩漬けをやってはいけないのである。だから、株価の波に乗り損なったら損切りしなければならない。

確かに、損切りの重要性というのはよく言われることですが、これほど「言うは易く行うは難し」というものは他にないのではと思われるほどです。

ここでも書いたような方法を参考にして、是非「損切り」を徹底して行っていただければと思います。

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