読書録・書評

【読書録・書評】『いつでも、何度でも稼げる! IPOセカンダリー株投資』

ここでは、以下の書籍についてのレビューを書いていきたいと思います。

1.書籍の概要

まずは、本書の概要からです。

本書では、IPO(Initial Price Offering:株式新規公開)セカンダリー投資について書かれています。

IPO投資というと、抽選・裁量による新規公開株の獲得と、その後の初値売りを思い浮かべる方が多いかと思います。

ただ、それだけではチャンスが少なく、得られる利益も限定的です。

そこで本書では、IPO株の新規公開後(上場後)への投資法である、IPOセカンダリー投資法について詳細に書かれています。

なお、本書の章立ては、以下のようになっています。

  • 第1章:セカンダリー市場で儲けたければまずはプライマリー市場を熟知すること!
  • 第2章:上場初日~数日以内のIPOセカンダリー投資必勝法
  • 第3章:上場後1週間~数か月以内のIPOセカンダリー投資でじっくり稼ぐ!
  • 第4章:IPOセカンダリー投資でさらに利益を増やす方法&考え方
  • 第5章:IPOセカンダリー投資【応用編】

ここでは、本書の中で気になった部分や参考になった部分について、一部を抜粋しながらレビューしていきたいと思います。

2.初値騰落率の高いIPO株

第1章では、セカンダリー投資を行ううえでの前提として、IPOの仕組みや、どんな銘柄の初値が上がりやすいか、といったことについて書かれています。

どんな銘柄の初値が上がりやすいかについては、セカンダリー投資を行ううえでも重要なポイントになってきますが、本章では次のような10個のポイントが挙げられています。

  1. 上場までの期間が短く、会社の沿革に問題がない
  2. 公募株比率が高く、売出株比率が低い。(売出株比率が100%に近い銘柄は避ける)
  3. 上場市場がマザーズかジャスダック
  4. 上場まで増収増益を続けている
  5. 公募売出数が少ない(公募株数が50万株以下が望ましい(マザーズやジャスダックの場合))
  6. 新規性の高い事業内容
  7. 資金吸収額が少ない(マザーズで30億円ジャスダックで20億円以下が望ましい)
  8. (公開時)時価総額が小さい(マザーズで200億円ジャスダックで100億円以下が望ましい)
  9. ストックオプションの付与数が少ない
  10. ベンチャーキャピタル(VC)の持株比率が低い

ここで、「公募株」とは、IPOにあたって新規に発行される株式のことで、「売出株」とは、その会社のもともとの経営者などが保有していた株を、IPOにあたって一般投資家に売却する株式のことです。

また、7.の「資金吸収額」というのは、公募株と売出株の合計株数に公開価格をかけ合わせたものになります。

9.の「ストックオプション」および、10.の「ベンチャーキャピタル(VC)」については、それぞれ次のように説明されています。

ストックオプションとは、企業が取締役などの経営陣や自社の従業員に対して、あらかじめ決められた価格で自社株を購入する権利を付与する制度のことです。

ベンチャーキャピタルとは、大口の機関投資家などから資金を預かり、ファンドを組成して多数の未公開企業に投資をする企業です。

ストックオプションの付与数が多いほど、またVCの持株比率が高いほど、IPOでは初値が上がりにくくなるため、これらによるリスクを本書ではそれぞれ「SOリスク」、「VCリスク」と呼んでいます。

さらに本書では、両者を合わせて「VSリスク」と呼んでいます。

なお、VCやもともとの大株主などに対しては、上場後一定の期間、あるいは一定の株価になるまでは、持ち株を売ることができないように制限をかけることが一般的です。

こうした制限のことを「ロックアップ」といい、90日180日1.5倍などといったロックアップ解除条件にも注目する必要があります。

3.上場後数日以内のIPOセカンダリー投資法

第2章では、上場後数日以内のIPOセカンダリー投資法について書かれています。

具体的には、以下のような手法になります。

  • 即金規制明け狙い
  • 初値買いからの数%抜き
  • 公募割れ狙い
  • IPO集中日の出遅れ銘柄狙い
  • 逆指値を活用したストップ高狙い
  • VCターゲット狙い

「即金規制」というのは、新規上場した株が人気化して、上場当日に初値が決まらなかった際に、証券取引所によって適用される特別ルールです。

即金規制では、指値注文しかできなくなり、また現金取引のみとなって、信用取引や受け渡し決済が禁止されます。

そして、そして初値が決まれば、翌営業日から即金規制が解除されて、通常の取引に戻りますが、即金規制は初値が決まったら即時に解除されるのではなく、その日の大引けまでは規制が続きます。

こういった制度上の特徴に着目して行うのが、「即金規制明け狙い」というわけです。

また、「初値買いからの数%抜き」や「逆指値を活用したストップ高狙い」は特に人気の高いIPO銘柄における手法となります。

「公募割れ狙い」では、公開価格を8%以上割り込んだところで買いに入っていき、リバウンドを狙うわけですが、買った株を翌営業日には持ち越さないといった注意点もあります。

4.上場後1週間~数か月以内のIPOセカンダリー投資法

第3章では、上場後1週間~数か月以内のIPOセカンダリー投資法について書かれています。

具体的には、以下のような手法になります。

  • 「上場来高値からの下落率に注目する手法」
  • 「業績の進捗率に注目する方法」
  • 「IPO空白期のポートフォリオ戦略」
  • 「年末年始の持ち越し戦略」

まず、「上場来高値からの下落率に注目する手法」というのは、上場来高値からの下落率40%をメドとして、40%、50%、60%と買い下がっていくものです。

この手法における注意点としては、VSリスクが大きい銘柄や東証1部のIPO株は避けるといったことが挙げられています。

次の「業績の進捗率に注目する方法」では、第3四半期の数字にだけ注目します。

そこで、利益の進捗率が高い銘柄を狙って、決算の1か月くらい前から仕込んでいき、実際の上方修正や本決算で値上がりしたところで利益確定するというものです。

続いて、「IPO空白期のポートフォリオ戦略」では、循環物色する資金の流れを狙っていきます。

ここで重要なのは、複数銘柄でポートフォリオを組み、リスク分散することです。

また、銘柄に関しても、業態や業績、タイミング、VSリスクなどを総合的に判断し、少なくとも買える要素が何点か存在している銘柄だけを選ぶといったことが書かれています。

最後の「年末年始の持ち越し戦略」は、11月、12月にIPOした銘柄のなかから、見るべき材料がある銘柄をいくつか選んで買い付け、翌年に持ち越すというものです。

これは、年明けにかけて色々なイベントがあることが多く、それによって値上がりすることがよくあるためです。

5.IPOセカンダリー投資法のプラスα

第4章は、IPOセカンダリー投資のプラスα的な内容となっています。

例えば、企業のIR部門にメールや電話で問い合わせをすることで、公表されている以上の情報を入手できたり、公表予定の情報を一足早く入手できたりといったことです。

また、時価総額に注目して、時価総額が小さい企業のワーストランキングにのってしまうようなIPO銘柄について、他の要素とも組み合わせて検討してみるといったことも書かれています。

そして、「循環物色の波」を意識することについても触れられています。

個々の銘柄はおよそ1週間ぐらい物色されると取引高が少なくなり、次の銘柄へと波が移っていきます。直近1~2か月程度にIPOした銘柄を対象に、そうした動きが順番に繰り返されていくのです。

ここでは、循環物色の波が巡ってきやすい銘柄の特徴についても書かれていますが、これは冒頭に挙げた、初値が上がりやすい銘柄のポイントと共通点が多くなっています。

6.IPOセカンダリー投資の応用編

第5章では、東証1部へのIPO銘柄や、REITのIPO銘柄について、指数への組み入れに先回りして儲ける手法について主に書かれています。

東証1部へのIPO銘柄であれば「TOPIX」、REITのIPO銘柄であれば「東証REIT指数」へと組み入れられるわけですが、これらの銘柄の指数への組み入れは、「上場の翌月末」というのがルールとなっています。

この手法では基本的には、組み入れの1週間前くらいから買いに入り、組み入れのイベントが発生する前(遅くとも組み入れの前日のうち)に売ります。

なお、REITのIPO銘柄に関しては、成功率が非常に高い一方で、REITという銘柄の特性上、狙える値幅は5%程度とそれほど大きくないといったことも書かれています。

7.総括

本書で書かれているIPOセカンダリー投資の手法は、こまめに値動きを確認できる環境にないと実践するのが難しいものもありますが、そうでなくでも実践できる手法についても多く書かれています。

実際の例を挙げながら、著者の豊富な経験に基づいて書かれた実践的な内容であり、かなり読み応えがありました。

ただ、失敗例がほとんど挙げられていなかったので、それがあればなお良かったといえます。

IPOセカンダリー投資に関しては、本書にある手法の一部を実践するだけでも、投資戦略の幅が広がり、収益機会を増やすことができるのではないかと考えています。

 

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