各種金融商品・制度

「銀価格」を世界の需要と供給、特に工業用需要から考える!

1.銀相場の概要

今回は、銀相場についてです。

「銀」は「金」と同様に、現物取引の中心はロンドン貴金属市場協会(LBMA)先物取引の中心はニューヨーク商品取引所(COMEX)となっています。

また、銀価格は、1トロイオンス当たりのドル建てで表示されます。

トロイオンス(oz tr、oz t、ozt)というのは、貴金属などで用いられる重量の単位で、単にオンス(oz)ともいいますが、1オンスは約31.1グラムになります。

銀については、金と同様に紀元前から貨幣として利用されており、近代においても、中国の清などでは銀本位制が、中世ヨーロッパなどでは金銀複本位制が採用されていたという歴史があります。

こういったことから、銀にも通貨的な側面があるためか、銀価格は金価格と似た動きをする傾向があるのです。

それは実際に、以下の図を見ても明らかです。

1973年以降の銀先物価格と金先物価格の推移を示した図。

ただ当然ですが、金と銀では大きく異なる点もあるため、そのことについてここでは銀の需給という観点から見ていきたいと思います。

2.世界の銀供給

世界の銀の需給に関して、まずは銀の供給の方から見ていきます。

以下の図は、2007年以降の世界の銀供給量の推移を示したものになります。

世界の銀供給量の推移を内訳別に示した図。

この図から、銀は鉱山生産からの供給が最も多いことが分かります。

また、鉱山生産量は緩やかな右肩上がりとなっており、直近の2016年においては供給量全体の約88%を占めるまでとなっています。

一方、銀のリサイクルからの供給に関しては減少傾向にあり、2016年においては全体の約14%となっていますが、銀価格の動向に左右される傾向があるといえそうです。

3.銀の国別鉱山生産量(2016年)

そして、銀の最大の供給源である鉱山生産量について、国別に2016年の鉱山生産量を見たのが以下の図です。

銀の2016年の国別鉱山生産量を示した図。

この図から分かるように、銀は世界の幅広い地域で生産されています。

金や銀と同じ貴金属の中でも、例えばプラチナでは南アフリカの鉱山生産量が約7割となっており、南アフリカの経済・社会情勢がプラチナ価格に影響してくることがあります。

ですが、銀に関しては、そういったリスクは低いといえます。

4.世界の銀需要

次に、世界の銀の需要に関してです。

以下の図は、2007年以降の世界の銀需要量の推移を示したものになります。

世界の銀需要量の推移を内訳別に示した図。

この図から、銀の需要はどの用途についても概ね横ばいで推移しているように見えます。

そこで、直近の2016年における銀需要量の内訳を見てみると、宝飾品が約20%、工業用が約55%投資用(銀地金・コイン)が約20%、銀器が約5%となっています。

そして、この銀の需要に関しては、金やプラチナといった他の貴金属と比較してみることで、その特徴が見えてきます。

まず、同じく2016年における金の需要は、宝飾品が約53%、工業用が約10%投資用(金地金・コイン)が約30%、公的部門が約7%となっています。

次に、2016年のプラチナの需要は、宝飾品が約28%、工業用が約65%(自動車触媒が全体の約42%)、投資用(プラチナ地金・コイン)が約7%となっています。

このように、銀の需要を金やプラチナの需要と比較してみると、銀ではプラチナほどではないものの、金と比較して工業用需要がかなり大きな割合を占めていることが分かります。

また、銀の投資用需要に関しては、プラチナほどではありませんが、金よりも全体に占める割合が小さくなっています。

5.銀先物価格とCFTC建玉明細

ここで、銀の投資用需要ということに関連して、NY銀先物における投機筋の売買状況を、CFTC建玉明細をもとに見てみます。

このCFTC建玉明細というのは、米商品先物取引委員会(CFTC)が、米先物市場における大口トレーダーの建玉明細を発表しているものです。

このうち、特に投機筋の買い建玉から売り建玉を差し引いたネットポジションについて、ここでは見ていきます。

そのNY銀先物における投機筋ネットポジションと、銀価格との推移を示したのが以下の図です。

CFTC建玉明細の投機筋ネットポジションと銀価格の推移を比較した図。

しかし、この図からも見て取れるように、銀価格と投機筋ネットポジションとの間にはほとんど相関を認めませんでした。(相関係数:約0.17)

これは、NY金先物では金価格と投機筋ネットポジションとの間に強い相関を認めていたのと対照的です。

やはり、銀では金と比較して工業用需要の比重が大きいため、工業用需要の動向が銀価格に大きく影響してくるのかもしれません。

6.銀の工業用需要

そこで、銀の工業用需要の内訳を見ていきますが、その2007年以降の推移を示したのが以下の図です。

銀の工業用需要の内訳別の推移を示した図。

この図からも分かるように、デジタルカメラの普及によるフイルム需要の減少から、写真用需要は右肩下がりとなっています。

また、接合用はほぼ横ばいですが、電気・電子用やその他の需要は減少傾向となっていることも分かります。

太陽電池用は、2010年まではその他の需要に含まれていたため、2011年からのデータとなっていますが、その需要は足元で増加傾向となっています。

そして、今後も世界的に太陽電池の設置が増加していくことが予想されています。

例えば、国際再生エネルギー機関(IRENA)は2017年に、世界の太陽電池設置量を2020年に591GW、2030年に1760GWと予測しています。

しかし、だからといって太陽電池の設置に比例して、銀需要が増えていくというわけではありません。

銀需要が大きく増加して銀価格も上昇してしまうと、銀使用が節約されたり、銀の代替として銅などが使用されるようになるためです。

実は数年以上も前から、太陽電池の銀需要増加に伴い、銀価格が1オンス100ドル以上に値上がりするなどといった予測がありましたが、実際はそうはなっていません。

冒頭で示した図を見ても分かるように、直近では1オンス17ドル前後での推移となっています。

とはいえ、太陽電池の設置量が大きく増加していくのは間違いなさそうなので、あとはそれに伴って銀需要がどれだけ増加していくかでしょう。

また、現在需要が伸びつつある電気自動車(EV)などの制御機器向けといったような、新たな需要が今後どれだけ増加してくるかも関係してきます。

そして、銀相場はその市場規模が比較的小さいため、大規模な投機資金の流入により、価格が大きく上昇することもあるので、そういった要素も加味する必要があります。

これについては、銀相場の歴史などとともにまた別の機会に書いていきたいと思います。

 

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