相場のデータ・指標

「WTI原油」の先物価格と、原油在庫統計(EIA・API)

原油相場に関しては、以下の記事にあるように、「CFTC建玉明細」や「米国の期待インフレ率」、「主要産油国の情勢」について書いてきました。

ここでは、「在庫統計」という需給の観点から、原油相場について考えていきたいと思います。

1.石油在庫統計とは?

原油には、WTI原油や北海ブレント原油、ドバイ原油などがありますが、ここではWTI原油についてです。

そして、WTI原油の先物価格に大きく関係してくる石油の在庫統計には、主に2つのものがあります。

それは、米国エネルギー情報局EIA:U.S. Energy Information Administration)と米国石油協会API:American Petroleum Institute)によるものです。

ここで、EIA政府機関(公的機関)であるのに対し、API石油・天然ガス産業の業界団体(民間機関)であり、また調査方法の違いからも、データの精度という点ではEIAの方に軍配が上がります。

ただ、EIAは日本時間で毎週水曜日の早朝APIは毎週水曜日の深夜に、前週金曜日時点での統計データが発表されます。

つまり、APIの在庫統計の方が、EIAのものよりも早く発表されるのです。

そのため、APIの在庫統計もEIAのものと同様に、投資家や業界関係者などに注目されるものになります。

2.EIAの週間石油在庫統計(U.S.)

それでは早速、原油の在庫統計とWTI原油先物価格との推移を見ていきます。

まずは、EIAの週間石油在庫統計から見ていきますが、この統計では原油やガソリンなどといった商品別だけでなく、米国の西海岸、中西部などといった地域別でも発表されています。

そして、ここで見ていくのは米国全体原油在庫統計で、1983年5月以降の推移をWTI原油先物価格の推移とともに示したのが以下の図です。(見やすくするために、在庫統計のスケールは反転しています。)

EIA(米国全体)の原油在庫統計とWTI原油先物価格の推移

この図からは、ここ5年ほどは在庫統計と原油価格の推移との相関が強くなっているように見えます。

ここで、WTI原油価格は2014年半ば頃まで1バレル100ドル前後で推移していましたが、2015年の春先には40ドル台へと急落していました。

この急落の背景としては、在庫統計と原油価格のここ5年ほどの強い相関性からすると、原油在庫の増加というのが大きな要因としてあったのではないかと推測されます。

また、足元の原油価格上昇も、原油在庫の減少が大きく影響していると思われます。

3.EIAの週間石油在庫統計(C.O.)

次に、同じくEIAの週間石油在庫統計から、今度は米国全体ではなく、オクラホマ州クッシングという地域の原油在庫統計を見ていきます。

それは、このクッシングはWTI原油の現物受渡し場所ともなっており、クッシングの原油在庫統計は、米国の原油需給状況を反映するものとして、米国全体のものとともに注目されているためです。

そして、このクッシングの原油在庫統計とWTI原油先物価格の2004年4月以降の推移を示したのが以下の図になります。(見やすくするために、在庫統計のスケールは反転しています。)

EIA(クッシング)の原油在庫統計とWTI原油先物価格の推移

このクッシングの原油在庫統計の推移ですが、残念ながら見ただけでは米国全体の原油在庫統計との違いがよく分かりません。

そこで、この両者について、WTI原油先物価格との相関係数を、2012年3月以降の期間でそれぞれ比較してみました。(2012年3月以降の期間としたのは、次に挙げるAPIの原油在庫統計とも比較しやすくするためです。)

すると、クッシングの在庫統計では約-0.768、米国全体の在庫統計では約-0.877となっていました。

もちろん、相関係数だけで全てが説明できるわけではありませんが、この結果から、EIAの週間石油在庫統計に関しては、米国全体のものだけ見ておけば十分ではないかと思われます。

4.API の週間石油在庫統計

最後に、API の週間石油在庫統計について見ていきます。

このAPI の原油在庫統計とWTI原油先物価格の2012年3月以降の推移を示したのが以下の図です。(見やすくするために、在庫統計のスケールは反転しています。)

APIの原油在庫統計とWTI原油先物価格の推移

この図において、先に相関係数を比較したのと同じ2012年3月以降の期間における、API の原油在庫統計とWTI原油先物価格との相関係数を調べてみると、約-0.883となっていました。

つまり、API の原油在庫統計は、EIAの原油在庫統計(米国全体)と比較しても、遜色ないデータ精度であるといえそうです。

そういったことからも、もし仮にWTI原油先物の短期トレードをするような場合には、EIAの原油在庫統計よりも早く発表されるAPI の原油在庫統計がより重要なものとなってくるでしょう。

また、API とEIAの原油在庫統計ともに、事前予想の数値も発表されているため、特に短期トレードにおいては、その数値と実際の数値との比較で見ていく必要もあります。

ただ、API の原油在庫統計のデータはソース元から入手しようとすると有料となってしまいます。(直近のデータであれば、Investing.comのアメリカ 石油協会週次原油在庫のページより入手することができます。)

そのため、短期トレードをするなどというのではなく、大まかな傾向を把握するといった目的であれば、EIAの原油在庫統計だけを見ていけば十分でしょう。

そして、2014年後半のWTI原油価格の急落などは、冒頭にご紹介した記事の中で書いた、「WTI原油のCFTC建玉明細」や「米国の期待インフレ率」からは、そこまでうまく説明できませんでした。

一方で、2014年後半のWTI原油価格急落も含め、ここ5年ほどはここで取り上げた「原油在庫統計」が、WTI原油価格の動きを割とよく示しているように思えます。

とはいえ、市場が主に何を材料視するかというのは、時とともに移り変わっていくものでもあるので、「WTI原油価格のCFTC建玉明細」や「米国の期待インフレ率」などについても「原油在庫統計」とともに注目していきたいところです。

そして、目先の原油相場では、過去と比較しても高い水準にあるここ数年の原油在庫が、今後このまま減少していくのかどうかには注目です。

 

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