相場のデータ・指標

「東証REIT指数」:日銀のJ-REIT買い入れと投資信託の影響

ここでは、東証REIT指数における、日本銀行(以下、日銀)のJ-REIT買い入れの影響について探ってみたいと思います。

また、商品分類別の投資信託(以下、投信)の資産増減状況という観点からも東証REIT指数について考えていきます。

なお、REITおよび東証REIT指数について詳しくは、以下の記事で書いていますので、よろしければご参照ください。

1.日銀のJ-REIT買い入れ政策の変遷

まずは、日銀のJ-REIT買い入れ政策についてです。

日銀は、2010年10月に、ETFやJ-REITなどの金融資産を買い入れる「資産買入等の基金」を創設し、そのうちJ-REITに関しては買入限度額を500億円程度としていました。

また、2012年4月27日、10月30日には、J-REITに関してそれぞれ100億円ずつの買入基金の増額が決定されました。

2013年4月4日には、「量的・質的金融緩和」が導入され、J-REITの保有残高が年間300億円に相当するペースで増加するよう買い入れを行うことが決定されました。

そして、2014年10月31日には、「量的・質的金融緩和」が拡大され、J-REITの買い入れペースを従来の3倍の年間900億円に増額することが決定され、現在へと至っています。

2.日銀のJ-REIT買い入れと東証REIT指数

では早速、日銀のJ-REIT買い入れによる影響を見ていきます。

以下の図は、日銀のJ-REIT買い入れの累計額と、東証REIT指数の推移とを示したものです。

この図における、J-REIT買い入れ累計額と東証REIT指数の相関係数は約0.82と強い相関を認めています。

ただ、相関関係があるから因果関係があるといえるわけではなく、相関係数の高さが全くの偶然によるものである場合も多々あります。

また、上図からも分かるように日銀によるJ-REIT買い入れの累計額は、2017年末で4500億円弱と規模もそこまで大きいわけではありません。

そして、日銀によるJ-REIT買い入れ累計額は右肩上がりとなっているのに対し、東証REIT指数は2016年後半より下落傾向となっていることも気になります。

ですから、日銀によるJ-REIT買い入れだけで、東証REIT指数の動きを説明するのはかなり厳しいと言わざるを得ません。

そこで、東証REIT指数について別の観点からも考えてみます。

3.投資信託の資産増減状況と東証REIT指数

東証REIT指数を構成しているJ-REIT市場における主な投資家には、日銀の他にも投資信託や海外投資家などがあります。

これらの中でも、投信はJ-REITの大きな買い手となっていましたが、特に毎月分配型の投信からの資金流出が続いており、それが2016年後半からの東証REIT指数下落の大きな要因でであるといわれています。

この毎月分配型投信からの資金流出のきっかけとなったのが、2016年9月に金融庁が発表した金融レポートです。

金融庁は、そのレポートの中で「毎月分配型投信」と明言こそしていないものの、手数料が高く、税制面で非効率、運用にも無理があるとして、毎月分配型投信が資産形成に不向きな商品であると暗に指摘したのです。

他にも、複利効果を享受できないなどといった点もあり、毎月分配型投信は買うに値しない商品であるため、金融庁の指摘は至極もっともです。

さて、ここでは投信による東証REIT指数への影響を見るために、「毎月決算型」、「国内 不動産投信」といった商品分類別の投信の資産増減状況を東証REIT指数と比較していきます。

3-1.「毎月決算型」投信と東証REIT指数

まずは、「毎月決算型」投信の資産増減状況を東証REIT指数の推移と比較してみます。(東証REIT指数は2010年1月~、投信の資産増減状況は2010年3月~)

この図を見ると、上記の金融レポートが出た2016年9月よりも前の2015年7月頃より「毎月決算型」投信からの大きな資金流出が起きていたことが分かります。

2015年7月というと、FRBがリーマン・ショック以降初めての利上げを行った2015年12月や、2015年8月の中国ショックの前であり、まだ日経平均株価が2万円前後を維持していた時期になります。

となるとですが、上記の金融レポートにも表れているように、金融機関に顧客本位の営業姿勢を求めるなど、金融業界の変革を進めようとしている森信親氏が、金融庁長官に就任したのがちょうど2015年7月になります。

ですから、このことがもしかしたら2015年7月からの「毎月決算型」投信からの資金流出に関係しているのかもしれません。

ただ、東証REIT指数の方を見ると、「毎月決算型」投信の資産減少ほどは下がっていないことも分かります。

3-2.「国内 不動産投信」と東証REIT指数

そこで次に、「国内 不動産投信」の資産増減状況を東証REIT指数と比較してみます。(東証REIT指数は2010年1月~、投信の資産増減状況は2010年3月~)

すると、「国内 不動産投信」の資産増減状況と東証REIT指数との相関係数は、約0.97と非常に強い相関を認めました。

ちなみに、前述した「毎月決算型」投信の方では相関係数は約0.57でした。

ただ、このような強い相関を認めてはいるものの、この図からは「国内 不動産投信」の資産状況は2016年末まで増加傾向となっていたのに対して、東証REIT指数は2015年頃から概ね横ばいで推移していたことが分かります。

以上のことから、「毎月決算型」投信や「国内 不動産投信」の資産増減状況だけでは、日銀のJ-REIT買い入れと同様に、東証REIT指数の動きを説明するにはやや物足りないと言わざるを得ません。

4.商品分類別の投信資産増減状況

最後に、商品分類別の投信の資産増減状況について見ていきます。

具体的な商品分類に関しては、全てではありませんが以下のものについてとなります。

  • 「国内 株式」、「国内 債券」、「国内 不動産投信」
  • 「海外 株式」、「海外 債券」、「海外 不動産投信」
  • 「毎月決算型」

これらの商品分類別の投信資産増減状況の2010年3月以降の推移を示したのが以下の図です。

この図を見ると、「毎月決算型」投信の2015年7月頃からの資金流出によって、「海外 債券」の投信も大きく資金流出となっていることが分かります。

「毎月決算型」投信では、毎月分配するために高い利回りが期待できる、海外債券や国内外の不動産投信が主に組み入れられています。

そして、その中でも特に海外債券が「毎月決算型」投信で多く組み入れられていたということが、この図からは分かります。

また、「毎月決算型」投信の資産残高は大きく減少したといっても、まだ30兆円もあります。

今後、この資産残高がまた増加してくるといったことは考えづらく、むしろさらに減少していくことが予想されます。

となると、「毎月決算型」投信にも多く組み入れられているであろう、「国内 不動産投信」からのJ-REIT市場への資金流入も先細りとなっていくでしょう。

ですから、今後のJ-REIT市場を考えていく上では、海外投資家や個人など、他の投資主体によるREITの売買状況についても見ていく必要があるといえます。

これについては、また別の機会に、REITにおける「投資部門別売買状況」のデータを紐解いて検証していきたいと思います。

 

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