相場のデータ・指標

投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)を読み解く! その壱

以下の記事では、日本株に大きな影響を与える、外国人投資家(海外投資家)の売買動向について、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)のデータをもとに見ていきました。

また、「投資部門別売買状況とは何か?」についても書いてありますので、よろしければご参照下さい。

 

そして、そこでは海外投資家の売買動向(累計)と日経平均株価との間に強い相関が認められましたが、それを再掲したのが以下の図になります。

海外投資家の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)

この図からも分かるように、直近において(2016年9月頃より)日経平均株価の上昇ほどには、海外投資家の累計売買金額が上昇しておらず、両者の乖離が広がっていました。

その要因としては、海外投資家以外の他の投資主体が買い越しとなっているのだろうということも書きました。

そこで、ここでは投資部門別売買状況のデータから、海外投資家以外の投資主体についていくつか見ていきたいと思います。

1.投資主体の分類

初めに、投資主体にはどういったものがあるかを見ていきます。

まず、投資主体は自己委託の2つに大きく分類されます。

自己というのは、証券会社が自身の勘定で行った売買のこと(ディーラー業務)で、委託というのは、その名の通り取引参加者からの委託を受けて行った売買のことを指します。

このうち後者の委託に関しては以下のように細分化されています。

  • 委託内訳:法人、個人、海外投資家、証券会社
  • 法人内訳:投資信託、事業法人、その他法人等、金融機関
  • 金融機関内訳:生保・損保、都銀・地銀等、信託銀行、その他金融機関

では早速、これらのうち、自己個人信託銀行について順を追って見ていきます。

2.自己の売買動向と日経平均株価

初めに、証券会社が自身の勘定で行った売買である「自己」についてです。

この「自己」の累計売買金額と日経平均株価との推移を示したのが以下の図になります。

自己の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)

この図を見ると、2016年9月頃より急激な勢いで買い越しとなっていることが分かります。

つまり、冒頭で書いた、海外投資家の累計売買金額の上昇よりも大きく日経平均株価が上昇していた要因というのは、この「自己」の大幅な買い越しにあったと言えます。

3.個人の売買動向と日経平均株価

次は、「個人」についてです。

この「個人」の累計売買金額と日経平均株価との推移を示したのが以下の図になります。

個人の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)

この図を見やすくするために、個人の累積売買金額のスケールを反転させたのが以下の図です。

個人の売買動向(累計・軸反転)と日経平均株価(2007年1月~)

この図を見ても分かるように、個人の累積売買金額と日経平均株価とは強い逆相関を認めており、実際に相関係数も約-0.77となっています。

つまり、個人投資家は株価が下がれば買い、上がれば売るという逆張り傾向があるということが分かります。

そして、もう何年も個人の売り越しが続いていたということも分かります。

実際、11月中旬にはMRF(マネー・リザーブ・ファンド)の残高が13兆円超と過去最高を更新したというニュースもありました。

MRFというのは、証券口座の現預金に当たるもので、個人投資家の待機資金ともいえるようなものになります。

なお、「個人」や「自己」に関しては、その売買が「現金」の買いと売り、「信用」の買いと売りとに分けたデータも公表されており、これについては以下の記事で書いていますので、よろしければご参照ください。

 

4.信託銀行の売買動向と日経平均株価

最後に、「信託銀行」についてです。

なぜ「信託銀行」なのかですが、それは信託銀行が年金資金を運用しており、その年金には世界有数の運用資産を誇るGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が含まれるためです。

つまり、信託銀行の売買動向が年金資金、特にGPIFの動向を反映しているということなのです。

その信託銀行の累計売買金額と日経平均株価との推移を示したのが以下の図になります。

信託銀行の売買動向(累計)と日経平均株価(2007年1月~)

そして、この図を見やすくするために、信託銀行の累計売買金額のスケールを反転させたのが以下の図です。

信託銀行の売買動向(累計・軸反転)と日経平均株価(2007年1月~)

この図からは、2014年中頃までは強い逆相関を認めていますが、その後は両者の乖離が大きくなっていることが分かります。

実際、全期間で見ると相関係数は約0.07なのですが、2013年度末(~2014年3月末)までの相関係数は約-0.88であり、それ以後は約0.39となっています。

5.GPIFのポートフォリオ

この2014年中頃を境に、信託銀行の売買動向が大きく変化した要因としては、GPIFの基本ポートフォリオの見直しに伴う資産構成割合の変更が考えられます。

具体的には、以下のように基本ポートフォリオの見直しが行われていました。

GPIFの基本ポートフォリオの推移

  2006/4/1~ 2013/6/7~ 2014/10/31~
国内株式 11% ±6% 12% ±6% 25% ±9%
国内債券 67% ±8% 60% ±8% 35% ±10%
外国株式 9% ±5% 12% ±5% 25% ±8%
外国債券 8% ±5% 11% ±5% 15% ±4%
短期資産 5% 5%

この表にあるように、2014年10月31日に発表された構成割合の目標値では、国内株式の割合が12%から25%へと大きく引き上げられていることが分かります。

ただ、信託銀行の買い越しは、その発表よりも早い2014年中頃から増加し始めています。

これは、2014年6月24日にGPIFの基本ポートフォリオの見直し実施が閣議決定されたことが関係しているかと思われます。

また、この基本ポートフォリオの構成割合はあくまでも目標値ですが、実際の構成割合についても定期的に公表されています。

そのうち国内株式について、2001年度からの各年度末時点での構成割合と日経平均株価との推移を示したのが以下の図です。

国内株式の構成割合と日経平均株価(2002年3月末~)

この図を見ても明らかなように、ここまで強い相関(相関係数:約0.83)が認められるとは思いませんでしたが、それだけGPIFの国内株式市場へと及ぼす影響力が強いということが言えます。

それは、直近の平成29年度第2四半期末(9月末)における、GPIFの運用資産額が約157兆円と巨額であることからもうかがい知ることができます。

そして直近において、国内株式の構成割合は目標値の25%に近い水準で推移しており、ここからさらに構成割合が上昇していくというのは考えづらい状況です。

ただ、GPIFの基本ポートフォリオを見ても分かるように、国内株式の目標値は「25% ±9%」となっており、最大で34%までの上昇はあり得るということになります。

そういったことから、投資部門別売買状況(投資主体別売買動向)と併せて、GPIFの国内株式構成割合についても、その推移を追っていく必要がありそうです。

 

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