相場のデータ・指標

CAPEレシオ(シラーPER)やPERから見て、S&P500は割高か?

ここでは、アメリカの代表的な株価指数であるS&P500について、PERCAPEレシオ(シラーPER)という観点から、その割高度合いを見ていきたいと思います。

1.PERとは?

まずは、PERについてです。

PER(Price Earnings Ratio)というのは株価収益率のことで、株価を企業の利益水準と比較したものになります。

一口に利益といっても、利益には営業利益や経常利益、当期純利益などがありますが、PERの計算に用いられるのは当期純利益で、PERは以下の計算式で求められます。

PER=時価総額/当期純利益

この計算式の分子と分母のそれぞれにおいて、

  • 時価総額 =株価×発行済み株式数
  • 当期純利益=一株当たり当期純利益×発行済み株式数

なので、以下の式でもPERを求めることができます。

PER=株価/一株当たり当期純利益(EPS)

こちらの式の方がどちらかというと一般的で、特に分母の一株当たり当期純利益は、EPS(Earnings Per Share)とも表されます。

一般に、PERが低い方が割安であると判断されますが、何か明確な数値の基準があるわけではありません。

また、業種によってPERの水準は異なり、成長産業ではPERが高くなる傾向があるのに対し、成熟産業ではPERが低くなる傾向があります。

そういったことから、PERは同業種間での比較や、市場平均との比較、その企業の過去の水準との比較などで判断するのが一般的です。

2.平均PERとS&P500

では早速、S&P500に採用されている500銘柄の平均PERとS&P500の推移を見ていきたいと思います。

平均PERとS&P500の推移(1900年1月~)

この図からも分かるように、1900年から1990年代半ばまではPERが概ね5倍~25倍の間で推移していました。

しかし、1990年代後半以降は明らかにPERの水準が上昇しています。

そのため、直近ではPERが約25倍となっているのですが、大して割高な水準にあるようにも見えません。

3.各種水準のPERとS&P500

そして、1990年代後半以降では、ITバブル後やリーマン・ショック後のような特殊な状況を除くと、PERは概ね15倍~35倍で推移しているといえます。

そこで、PERが15倍~35倍に相当する株価とS&P500の推移を示してみたのが以下の図になります。

各種水準のPER相当株価とS&P500の推移(1990年1月~)

やはり、この図を見ても現在のS&P500がそこまで割高な水準にあるようには見えません。

ただ、確かに2000年前後のITバブル前にはPERが35倍近くまで上昇する場面もありましたが、2008年のリーマン・ショック前のPERは20倍~25倍程度までの上昇に過ぎませんでした。

つまり、PERだけで割高かどうかを判断するのには限界があることが分かります。

4.CAPEレシオとは?

次にCAPEレシオについて見ていきます。

CAPEレシオは、Cyclically Adjusted Price Earnings Ratioの略で、景気循環調整後の株価収益率(PER)と訳されます。

これは、ノーベル経済学賞受賞者でエール大学教授のロバート・シラー氏が考案したもので、シラーPERとも呼ばれます。

そして、CAPEレシオでは、通常のPERで用いられる単年度の一株当たり利益ではなく、過去10年間のインフレ調整後一株当たり利益の平均値を用いて、PERを算出します。

これにより、一時的要因によって収益が大幅に変動してしまうことの影響が薄まり、物価変動の影響も除外できるため、より実質的な収益からPERを算出できるというわけです。

5.CAPEレシオとS&P500

それでは、CAPEレシオについてもその推移をS&P500と併せて見ていきます。

CAPEレシオとS&P500の推移(1900年1月~)

CAPEレシオでは、一般に25倍を超えると株価が過熱圏にあるという見方がされますが、直近では30倍を超えてきています。

過去に30倍を超えたのは、1929年の世界大恐慌の前や、2000年のITバブルの時だけでした。

ちなみに、2008年のリーマン・ショック前は25倍以上では推移していましたが、30倍まではいきませんでした。

6.各種水準のCAPEレシオとS&P500

そして、CAPEレシオは1990年以降では概ね15倍~40倍で推移しており、そのレンジに相当する株価の推移とS&P500の推移とを示したのが下図になります。

各種水準のCAPEレシオ相当株価とS&P500の推移(1990年1月~)

やはり、この図からも直近のS&P500は、2000年のITバブル時ほどではなくても、2008年のリーマン・ショック前よりは割高な水準にあるといえます。

また、2008年のリーマン・ショック前には、何年もの間にわたって、CAPEレシオが25倍を超えて推移していたことも分かります。

以上から、CAPEレシオもPERと同じようにこれだけで割高かどうかを判断するのには限界があり、相場転換のタイミングを計ることにも向きません。

CAPEレシオはあくまで参考程度のものだと言えそうです。

 

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