投資の基礎知識・理論・心理

アクティブ・ファンド vs. パッシブ・ファンド

1.「アクティブ・ファンド」、「パッシブ・ファンド」とは

まず初めにですが、投資信託はその運用方法の違いから、「パッシブ・ファンド」と「アクティブ・ファンド」の2つに分類されます。

言うまでもないかもしれませんが、アクティブは「積極的な」、パッシブは「受動的な」という意味になります。

その意味からも連想されるように、パッシブ・ファンドは、基本的に日経平均株価などのインデックス(指標)に連動するように設計されたものです。

そして、インデックスのような、ファンドの運用成果を比較する際に基準となるものをベンチマークといいますが、そのベンチマークを上回る運用成果を目指すのが、アクティブ・ファンドです。

つまり、パッシブ・ファンドでは、市場全体の平均的な収益を目指すのに対し、アクティブ・ファンドでは、平均を上回る収益を目指します。

2.アクティブ・ファンドを選ぶべきか

では、平均的な収益を目指すパッシブ・ファンドよりも、平均を上回る収益を目指すアクティブ・ファンドを選んだ方がよいのでしょうか?

これについては、世界中で数多くの研究があります。

それらの研究によると、10年間で6~8割のアクティブ・ファンドはベンチマークを下回ってしまうという結果が出ているのです。

これはなんとも残念な結果ですが、この理由として挙げられるものがいくつかあります。

それは、アクティブ・ファンドの高い信託報酬(運用管理手数料)や、活発な売買によって売買手数料や税金がより多くかかってしまうなどといったことです。

一般に、アクティブ・ファンドでは、ベンチマークを上回る運用成果を目指すために、市場や銘柄などに関する様々な調査が行われるため、その分だけ運用にかかる手数料がパッシブ・ファンドよりも高く設定されているのです。

そういったことから、アクティブ・ファンドはパッシブ・ファンドの運用成績を下回ってしまうことが多いのです。

3.優秀なアクティブ・ファンドを選ぶことは可能か

一方で、先の研究結果を再び見てみると、2~4割のアクティブ・ファンドはベンチマーク以上の収益を上げているという見方もできます。

では、そういった優れたアクティブ・ファンドを見つけ出すことはできないのでしょうか。

例えば、過去に好成績を残しているアクティブ・ファンドを選べば、そのファンドは将来にわたっても良い成績を上げ続けることできるのではないかと思われるかもしれません。

しかし、結論からいうと、話はそう単純ではありません。

アクティブ・ファンドにおいて、過去の好成績は、その後の好成績を何ら保証するものではないということが示されているためです。

むしろ、過去に好成績を上げたファンドは、その後低迷してしまうという傾向まで認められています。

こういったことを踏まえると、優れたアクティブ・ファンドを見つけ出そうとするのは、単なる徒労に終わってしまうことが多いといえます。

4.好成績のファンドを買えたとしても損してしまう!?

なお、こんな報告もあるので最後に付け加えておきたいと思います。

それは、仮にあるファンドが好成績を上げていたとしても、そのファンドを購入している平均的な投資家は損失を出してしまっているというものです。

信じられないかもしれませんが、この理由は単純で、ファンドが好成績を上げて高くなった時に購入し、ファンドの成績が落ちて安くなった時に解約してしまうという投資家が多いためです。

つまり、「安く買って、高く売る」という投資の鉄則と正反対の行動をしてしまっている投資家が多いのです。

投資や資産運用を始める前に、最低限の知識を身に付ける必要があると、私が考える理由はここにあります。

何も知らずに始めてしまうと、このように優れたファンドがあったとしても、利益を上げることが困難になってしまうためです。

もちろん、買ったり売ったりするタイミングをうまく計るのは至難の業であるというのは事実です。それどころか、タイミングを計ることなんて不可能だという人もいるくらいです。

確かに、完璧に売買のタイミングを計るというのは不可能です。ただ、色々な指標を参考にすることで、ある程度はタイミングを計ることができるというのが私の考えです。

これについては書き始めると非常に長くなってしまうので、いずれまた別の記事で書いていきたいと思っています。

とりあえずここでは、繰り返しになりますが、下手に投資信託に手を出すくらいであれば、投資信託の高い手数料と投資信託に代わる選択肢のところで書いたように、ETFを利用するのが賢明だということを改めてご理解していただければ幸いです。

 

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